抵当権付きの共有不動産の売却は難しい|弁護士Q&A
抵当権付きの共有不動産の売却は難しい
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担保付不動産の売却
共有不動産を売却したいのですが、抵当権がついています。このような担保付不動産でも売却することは可能なのでしょうか。
詳細解説
担保付共有不動産の売却は難しい
各共有者は自己の持分については単独で売却することができます。本件のように抵当権がついていてもそれは同じで、担保付きだからと言って、売却ができないというわけではありません。
ただ、売却がしにくくなるというリスクが発生します。特に共有不動産の共有持分のみの売却となると買い取ってくれる人がなかなか現れなかったり、買い取る人が現れても非常に安価な価格になってしまったり、ということがあります。
抵当権等の担保がついていると、担保権が実行された場合、その不動産は売却され、債務に充当されてしまいます。
そのような不動産をわざわざ買おうと思う人はあまりいないということです。
ただ、資産価値も高い場合や、抵当権を消滅させて(買受人が債権者に債務を弁済する)、ほかの共有者からの賃料相当を授受することができ、投下資本の回収の見通しが立つような場合は、売却するとことも可能な場合があります。残りの債務額や、不動産の価値によって状況は異なってきますので、一度ご相談してみてください。
売却の業者
共有不動産を専門業者を通じて処分する際に考えられる方法としては、共有不動産買取業者に買い取ってもらう、仲介業者を介して買い取ってもらう人を探すという2つの方法が考えられます。
1. 共有不動産買取業者
インターネットで検索すると共有不動産を専門で買い取る業者が出てくると思います。買い取り業者はその字のごとく自社が共有不動産を買い取ります。買い取りの後は、その共有不動産を第三者に売却し、その差額が利益となるという仕組みです。
買取価格と売却価格の差額がそのまま利益に直結するため、買い取る際は少しでも安く買い取ろうとします。
2. 仲介業者
一方、同じような共有不動産の専門業者でも、仲介業者があります。こちらは、自社で買い取るのではなく、買い取り先を紹介(仲介)してくれるという業者さんです。買い取り業者とは違い仲介料で成り立っておりますので、買い取り専門業者のように買取価格を少しでも安くというようなことはほとんどありません。
第三者の客観的公正な立場からその仲介をします。業者に相談する際は仲介業者→買取専門業者というように相談するのも高く売却する際の一つのポイントかもしれません。
参考:担保付き不動産の共有物分割請求訴訟で競売を命じる判決が出た場合
共有物を分割する際当事者間でまとまらない場合は訴訟になる(共有物分割請求訴訟)場合があります。
それでは、本件のような担保付共有不動産において、共有物分割請求訴訟を提起し、裁判所から「競売せよ」との判決が出た場合、担保権はどのようになってしまうのでしょうか。
抵当権(担保権)が抹消されるか(競売代金の中から担保権者に対して優先支払を行う)、担保権付きのままで競売を行うかについて争いがありました。
- 競売の場合に担保権が消えないとすると、担保権付きの不動産を買受人が負担することになります。
参考判例を見てみましょう。
♦最高裁平成24年2月7日判決
判旨:「民法258条2項所定の競売を命ずる判決に基づく不動産競売について、民事執行法59条が準用されることを前提として同法63条が準用されるものとした原審の判断は、正当として是認することができる。」
これだけではよくわからないと思いますので、具体的に出てきた条文を上げて考察してみます。
(売却に伴う権利の消滅等)
民事執行法59条1項:「不動産の上に存する先取特権、使用及び収益をしない旨の定めのある質権並びに抵当権は、売却により消滅する。」
この共有物分割請求訴訟での競売を命じる判決に基づく競売手続がとられた場合に、最高裁平成24年2月7日の決定で共有物分割請求に基づく競売を命じる判決によって担保権が消滅するということを明らかにしました。
担保権が消えてしまい、担保権者がかわいそう!と思うかもしれませんが、この場合、競売の売却代金が担保権者に対しては優先的に配当されることになります。売却代金安価すぎる場合はそもそも競売することができない(この旨の定めが民事執行法63条)とすることで、担保権者に不利益にならないよう調整しています。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。不動産の共有関係解消など相続と不動産分野の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。