【弁護士Q&A】相続3年ルールについて教えてください。
【弁護士Q&A】相続3年ルールについて教えてください。
末期ガンの父が、所有している共有持分の不動産があります。 父が生きているうちに、父の共有持分を父の姉へ贈与しようとしているのですが、贈与税の他に相続税もかかってしまうのでしょうか? 父の法定相続人は母と私ですが、共有持分の不動産は母も私もいらないので、父の姉に移転登記をすることに異議はありません。共有持分以外の財産は母が相続する予定です。 正直、父は3年はもたないと思います。もし父の姉に生前贈与した分も相続税が発生する場合、誰が支払うことになるのか教えてください。
相続や遺贈によって財産を取得した人が、被相続人から、その相続開始前3年以内(死亡の日から遡って3年前の日から死亡の日までの間)に、贈与(歴年課税に係る贈与)によって取得した財産があるときは、贈与を受けた財産の贈与時の価額を、その人の相続税の課税価格に加算することとなっています。※令和6年以降に贈与される財産に関しては、加算対象期間が段階的に延長され、最終的には相続開始前7年以内に行なわれた贈与が対象となる予定ですが、以下は、従来の3年ルールを基準に説明を致します。
今回の場合、現時点でのお父様の推定相続人はご相談者様とお母様ですので、このまま相続が発生した場合、お父様のお姉様は、お父様の相続人ではないので、『被相続人から贈与』の要件を満たしていませんが、ご相談者様が相続放棄をされた場合は、お父様のお姉様も相続人となりますので、『被相続人から贈与』となります。
暦年課税の場合、贈与税には年間110万円の基礎控除がありますが、贈与される共有持分(及びこれを含めた年間の贈与)がこの控除の枠を超える場合は、贈与税がかかります(なお、控除額以内で贈与税がかからなかった贈与であっても、相続開始3年以内に行なわれたものであれば、上記のルールにより、相続税の課税対象となります。
但し、対象となる3年以内の贈与について、既に贈与税を納めている場合には、計算された相続税の額から、納付済みの贈与税の額は控除されます。納付済み贈与税の金額の方が相続税の額より多い場合は、相続税は発生しません。
また、相続開始前3年以内の贈与であっても、(1)贈与税の配偶者控除の適用を受ける配偶者間の贈与、(2)直系尊属から贈与された住宅取得等資金のうち非課税の適用を受けたもの、(3)直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち非課税の適用を受けたもの、(4)直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち非課税の適用を受けたもの、については、相続税の課税価格に加算されません。
今回の場合、姉弟間での贈与ということなので、この(1)ないし(4)の例外には該当しませんが、上記のとおり、納めた贈与税は、相続税の額から控除されます。もっとも、納めた贈与税が相続税の額より多かったとしても、差額分の贈与税は還付されませんので、ご留意ください。
まとめ
- 相続開始前3年以内に相続人が被相続人から生前贈与を受けていた場合、贈与を受けた相続人は、当該生前贈与を加算された金額をベースに計算された相続税の納付義務を負うことになります。
- 但し、相続税の課税価格に加算される生前贈与に関して、既にその相続人が贈与税を納付している場合は、相続税の金額から納付済み贈与税の金額が控除されますので、二重課税を回避できます。
この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。