共有持分を売却したらどうなる?売却後のトラブルを防ぐ方法
共有持分を売却したらどうなる?売却後のトラブルを防ぐ方法
共有持分は、他の共有者の同意がなければ、増改築や売却が行えない不動産です。そのため、早く手放してしまいたいと考えている人も多くいらっしゃいます。
売却を考えている人から多く聞かれるのが以下の質問です。
「どのような人が買ってくれるのか?」
「売却を希望しているが、他の共有者とトラブルにならないか不安」
「売却したあとの活用方法が気に掛かる」
本記事では、上記の疑問や不安を解消できるよう、主な売却先・よくあるトラブルの内容・売却後の活用方法について解説します。
<この記事でわかること>
- 持分を売却する方法
- 共有持分の購入者
- 売却後の他の共有者との関係
- 共有持分の売却後によくあるトラブル
関連記事:共有持分売却の完全ガイド|売却戦略から具体的な方法まで解説
1.共有持分を売却する方法
本章では、共有持分を売却するための基本的な知識について解説します。権利関係が複雑な不動産ですので、トラブル防止のためにも前提知識はしっかりと身につけておきましょう。
1-1 共有持分とは
共有持分とは、1つの不動産を複数人で共有している状態におけるそれぞれの割合を指します。不動産が共有状態になる理由はさまざまですが、9割を占めるのが相続によるものです。
基本的に単独の意思では行える行為が限られており、他の共有者の同意がなければ増改築や売却行為が行えません。
共有持分と共有状態の不動産のイメージ図は以下の通りです。
(図1)
1-2 共有持分は他の共有者の同意なく売却可能
前節で、共有不動産は単独の意思で行える行為がほとんどないと解説しました。しかし、自分の持分のみであれば、単独の意思で売却ができます。
全員の同意が必要なのは不動産全体を売却する場合であって、自分の持分はその限りではないためです。これは、民法第251条・民法第206条にも定められています。
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。民法第251条
※不動産を売却する行為は「変更」に含まれます。
(所有権の内容)所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。民法第206条
つまり、共有者同士で処分や管理をめぐってトラブルになってしまった際、自分の持分だけ売却してしまっても法律上は問題がないのです。
1-3 共有持分の売却先
共有持分の不動産の売却先として代表的なのが以下の2つです。
- 共有者
- 第三者
それぞれに売却した場合を解説します。
1-3-1 共有者
他の共有者への売却は、購入者にもメリットがあるため、取引がスムーズに進みやすい傾向です。他の持分を購入して単独名義になる取引であれば、不動産の活用方法が広がるためです。この方法であれば、互いの合意のみで取引が成立します。
ただし、売却価格をめぐってトラブルに発展するケースも少なくありません。親族間の取引であっても、不動産鑑定を受けて適正な価格を把握しておきましょう。
1-3-2 第三者
第三者とは、個人・不動産買取業者・投資家を指します。ただし、共有持分の場合、不動産の活用に制限があるため、個人で共有持分を購入したいと考える人はほとんどいません。
不動産買取業者に共有持分を買い取ってもらう、もしくは不動産仲介業者を介して買主を探してもらうのが一般的な流れです。
買取と仲介は混同されがちですが「買取」とは不動産を自社で安く買取り、第三者に高く転売する形態を指します。その差額が買取業者の利益になるため、買取価格は低くなります。
一方、不動産を購入したい人と売主をつなぎ、より高く売却できるようサポートするのが仲介です。仲介は、双方または片方からの仲介手数料が利益になります。この仲介手数料は、売買価格に比例するため、買取業者とくらべて売却価格が高額になりやすい特徴があります。
不動産の買取と仲介の違いは、以下の図をご覧ください。
(図2)
2.共有持分を売却したらどうなる?
共有持分を売却したあとの不動産の活用方法や、他の共有者に発生しうるリスクなどを含めた以下の内容を解説します。
- 共有持分は誰が買う?
- 共有持分の購入者の目的
- 購入者と他の共有者の関係性
それぞれみていきましょう。
2-1 共有持分は誰が買う?
前述の通り、共有持分を購入するのは個人・不動産買取業者・投資家です。
しかし、個人が購入するのはあまり現実的ではありません。不動産に関する行為に他の共有者の同意が必要なためです。権利の一部を所有するだけになってしまうため、個人に売却するケースはあまり多くありません。
一般的には、不動産買取業者による自社買取または仲介業者を通じて、投資家に売却する場合がほとんどです。共有持分の購入希望者を個人が自力で探すことは、現実的ではないため、共有持分を専門に取り扱う買取業者または仲介業者へ売却の相談をするようにしましょう。
ただし、共有持分は一般的な物件よりも売却価格が安くなってしまう傾向にある点だけは留意しておきましょう。
2-2 共有持分の購入者の目的
「活用方法に制限のある共有持分を購入する目的はなんだろう?」と疑問を持っている人もいらっしゃるでしょう。
共有持分の不動産を自己が住居する目的で購入しようと考える人はほとんどいません。購入者の最終的な目的は、他の共有者の持分を買い取り、不動産全体の所有権を有し、収益物件として活用することです。
基本的には以下の目的で購入します。
不動産買取業者 | 不動産を単独名義にして転売することが目的。購入後すぐに、他の共有者と強引な売買交渉をおこなうため、トラブルになりやすい。 |
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投資家 | 収益物件として活用することが目的。持分割合に応じた家賃分配などの交渉をおこなう。一定期間、共有状態を維持する前提で購入するため、共有者とのトラブルが少ない。 |
売却した相手が他の共有者に対して不動産全体を所有するために売却を求めるケースも少なくありません。
収益物件としていた不動産を投資家に売却した場合は、持分割合に対する家賃分配を要求されるケースもあります。
2-3 購入者と他の共有者の関係性
第三者に持分を売却した場合、他の共有者と新しい持分の購入者は1つの不動産を共有している状態になります。購入者は不動産に関する権利の一部を所有した形になるため、他の共有者に対して賃料の配分や税負担について協議を持ちかけることが可能です。
協議が話し合いでまとまらなかった場合、購入者は共有物分割請求訴訟も行えます。共有物分割請求訴訟とは、裁判所へ共有状態の解消を求めるための手続です。
共有状態を解消する方法として以下いずれかが裁判所から言い渡されます。
- 現物分割
- 換価分割
- 代償分割
原則、裁判所の決定に従わなければなりません。
そのため、購入者は訴訟のリスクもふまえて共有持分を購入します。持分の売却を検討する際は、他の共有者から共有物分割請求訴訟を起こされる可能性を考慮して購入者を選ぶようにしましょう。
共有不動産の売却によるトラブルのイメージ図は以下の通りです。
(図3)
共有物分割請求訴訟については以下の記事も参考にしてください。
3.共有持分売却後のトラブル
共有持分を売却した際には、以下のトラブルが発生する可能性があります。
- 他の共有者から持分の売却を求められる
- 共有物分割請求訴訟を起こされる可能性がある
- 他の共有者からの嫌がらせ
共有者の関係性に亀裂が入るきっかけになる可能性もあるため、事前に把握しておきましょう。
3-1 他の共有者から持分の売却を求められる
共有持分を売却した場合、購入者から他の共有者へ持分の売却を求められる可能性があります。他の共有者の持分を購入することで、購入者は不動産の所有権を手に入れられるためです。
共有者に事前に相談せず、持分を売却した場合、親族である他の共有者は持分の購入者から取引を持ちかけられた時点で共有持分が売却されたと気がつきます。
法律上は問題ない行為ですが、他の共有者から「持分を勝手に売却した」とひんしゅくを買ってしまうリスクがあります。
購入者から売買を求められたことがきっかけでトラブルに発展するケースも少なくありません。
3-2 共有物分割請求訴訟を起こされる可能性がある
先でも解説した通り、共有者間で協議が進まなかった場合、共有物分割請求訴訟を起こされる可能性があります。
共有物分割請求訴訟にて裁判所が出した結果には原則従わなければならないため、結果によっては共有持分を手放さざるを得ません。
どうしても共有持分を売却したくない場合は、弁護士を立て、裁判で争う必要があります。弁護士を代理人に立てる際には数十万円〜数百万円の費用がかかります。
共有持分を売却した際には、他の共有者にこのような事態が発生してしまうリスクも考慮しておきましょう。
3-3 他の共有者からの嫌がらせ
共有持分を売却した場合、他の共有者から誹謗中傷や無言電話などの嫌がらせを受ける可能性があります。
他の共有者からすると「勝手に持分を売ったこと」に対する怒りに加えて、先述した通り、新しい共有者から持分の買取や不動産全体の売却について、交渉を受けることもあります。
また、新しい共有者は、当然ながら共有不動産に出入りする権利を有しています。見ず知らずの人が、共有不動産に出入りすることで、さらに共有者の怒りや精神的なストレスに繋がることは、想定できます。
このような背景から、持分を売却した人に矛先が向けられ、嫌がらせを受けるケースも珍しくありません。
嫌がらせを防ぐ方法や法的な対処方法は、あとで解説します。
4. 共有持分売却後のトラブルを防ぐには?
共有持分売却後のトラブルを防ぐためには、以下の点に留意しておきましょう。
- 買主(購入者)情報を確認する
- 不動産会社に売却後のトラブル対応を確認する
- 第三者と共有状態になる際のリスクを理解する
それぞれ解説します。
4-1 買主(購入者)情報を確認する
共有持分は、複数人で所有する形態であるため、処分や活用方針の違いにより共有者間でのトラブルが発生しやすい不動産です。また、権利関係が複雑になる性質上、売却相場が低くなるといったデメリットも持っています。
これらの理由から共有持分を早く売却したいと考える人も少なくありません。しかし、早く共有状態を解消したいからといって「安易に買取業者を選ぶ・売却価格を妥協する」などの行為は推奨できません。
共有持分を売却する際は、売る相手をしっかりと見極めて、のちのちトラブルに発展しないような業者を選ぶようにしましょう。
4-2 不動産会社に売却後のトラブル対応を確認する
不動産会社に売却する場合、その会社が売却後のトラブルに対応してくれるかを確認しましょう。「共有持分に関する知識を有しているのか・法律的な知識の提示やサポートをしてくれるのか」などの確認も重要です。
権利関係の複雑さから取り扱いが難しい不動産ですので、交渉ノウハウ・知識・経験を有していなければ対応すら難しいケースが多々あります。
共有持分を専門に取り扱う不動産会社は、弁護士と提携しているケースがほとんどです。しかし、中にはサポートは売却までとされており、売却後のトラブルはサポートの対象外としている会社もあります。
嫌がらせを防いだり、対処するためには、売主を守ってくれるアフターフォローのしっかりした不動産会社に売却するようにしましょう。
初回の相談時に、弁護士との提携状況やサポートの範囲について必ず確認しましょう。
(図4)
4-3 第三者と共有状態になる際のリスクを理解する
共有持分を売却する際には、他の共有者が第三者と共有状態になるリスクも理解しておきましょう。大きなリスクとしては、以下の2つがあります。
- 持分の購入者と他の共有者がトラブルになる可能性がある
- 自己の共有持分を売却したことで、他の共有者との関係が悪くなる可能性がある
それぞれみていきましょう。
4-3-1 持分の購入者と他の共有者がトラブルになる可能性がある
共有持分を売却した場合、購入者と他の共有者とのあいだで以下のトラブルが発生する可能性があります。
- 税金・家賃収入の分配を巡るトラブル
- 持分売買に関する共有者間でのトラブル
- 共有物分割訴訟によるトラブル
また、売った相手が悪質な業者の場合は理不尽な交渉を要求や嫌がらせなどをする危険性ももあります。
購入者が善良な業者であった場合でも、他の共有者は面識のない第三者と共有状態になり、多少なりとも不安を感じる点も覚えておきましょう。
これらのトラブルを防ぐためにも、共有持分を売却する際は、売る相手を慎重に見極めるのが大切です。
4-3-2 自己の共有持分を売却したことで、他の共有者との関係が悪くなる可能性がある
相談せず共有持分を売却してしまった場合、他の共有者から「勝手に持分を売却された」と捉えられてしまいます。また、新しい共有者とトラブルが発生した際には「勝手に売却したせいだ」と怒りの矛先が売主に向く可能性も少なくありません。
自己の共有持分は単独の意思で売却できてしまうため、このようなトラブルが発生しやすいのです。売却の際には、他の共有者との関係がある程度悪化してしまう可能性も覚悟しておきましょう。
また、トラブルが発生した際に備えて、弁護士が在籍しており売却後のフォローが手厚い不動産会社を選ぶのを推奨します。
まとめ
共有持分の売却は、他の共有者へトラブルが降りかかる・他の共有者から嫌がらせを受けるなどのリスクがあります。
売却する際には、相手が他の共有者に理不尽な要求をしてこないか、他の共有者から嫌がらせを受けた際のアフターフォローが整っているかを確認しておきましょう。
中央プロパティーは、これまで多くの共有持分に関するトラブルを解決してきた実績があります。共有持分の交渉ノウハウを多く有しており、スムーズな共有持分の売却が可能です。契約時には弁護士による契約書のチェックも行っているため、安心して売却できます。
売却後にトラブルが発生した際には、売主を徹底的に守る体制も整えています。その際の弁護士費用は完全無料です。
「共有持分を売却したいけれどのちのちのトラブルが怖くて踏み切れない」という人は、ぜひ中央プロパティーへご相談ください。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。共有物分割訴訟、遺産分割調停、遺留分侵害額請求など共有持分をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。