2024年1月改正!新しい相続時精算課税制度で何が変わる?
2024年1月改正!新しい相続時精算課税制度で何が変わる?
目次
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1 相続時精算課税制度の概要
相続時精算課税制度とは、財産の贈与税の計算方法の一つで、最大2,500万円の財産贈与を非課税にすることができます。
本来、年110万円以上の財産を贈与した場合(暦年贈与)、贈与税が課せられます。
しかし本制度を利用すれば、2,500万円まで非課税となるため、多額の現金や不動産などを納税せずに贈与することが可能です。
一方で2,500万円以上の財産を贈与した場合、一律20%の税率をかけた贈与税を納税することになります。
また暦年贈与は以下の計算式で算出し、税率と控除額が異なります。
- 課税対象額=贈与財産額-110万円(基礎控除額)贈与税=課税対象額×税率-控除額
<一般贈与財産>兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合
課税対象額 | 200万円以下 | 300万以下 | 400万以下 | 600万以下 | 1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 3,000万円以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ― | 10万 | 25万 | 65万 | 125万 | 175万 | 250万 | 400万 |
<特別贈与財産>直系尊属(父母や祖父母など)から18歳以上の子などに贈与する場合
課税対象額 | 200万円以下 | 400万以下 | 600万以下 | 1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 4,500万円以下 | 4,500万円以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ― | 10万 | 30万 | 90万 | 190万 | 265万 | 415万 | 640万 |
引用:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁
仮に3,000万円の財産を贈与した場合、以下の表の通り、相続時精算課税制度の方が贈与税を安くできる特徴があります。
暦年贈与(一般贈与財産) | 相続時精算課税制度(改正前) |
---|---|
1,195万円 | 100万円(改正後78万円) |
そのため多額の財産を贈与する場合は暦年贈与ではなく相続時精算課税制度の方が有効と言えます。
しかし財産を贈与しておけば、相続時の課税対象額を抑えられると考える方も多いですが、贈与者が亡くなった場合は相続財産をとしてみなされるため、一概に相続税対策になるとは言い切れないため、利用タイミングには注意しなければいけません。
相続時精算課税制度は、2024年1月1日から、以下の通り改正されました。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
贈与税の計算方法 | (贈与額-2500万円)×20% | ((贈与額-年110万円)-2500万円)×20% |
贈与税の申告 | 少額でも申告が必要 | 110万円未満の贈与の場合は申告付与 |
相続財産への加算 | 相続時精算課税制度を利用した後の贈与財産全てが対象 | 相続時精算課税制度を利用した後の贈与財産から、年110万円を差し引いた価額が対象 |
2 2024年1月改正の相続時精算課税制度のメリット
改正後の相続時精算課税制度には「年110万円以下であれば贈与の申告が不要」「基礎控除額も含まれる」の2点のメリットがあります。
①年110万円以下であれば贈与の申告が不要
以前の相続時精算課税制度は、利用した後に新たな財産を贈与したい場合、110万円未満でも課税対象となりました。しかし改正後は1年あたり110万円以下の贈与を行った場合、相続時精算課税制度を利用していても贈与税の申告が不要となるため、手続きが簡略化された特徴があります。
②基礎控除額も含まれる
贈与税の計算において基礎控除額(年110万円)も含まれるようになります。
改正前 | 改正後 |
---|---|
贈与税=(贈与額-2,500万円)20% | 贈与税=(贈与額-110万円-2,500万円)20% |
上記の通り、改正後には基礎控除額も含めて計算できるため、贈与税の納税額も低くなります。
3 相続税対策はどう変わる?
相続時精算課税制度を利用した贈与した財産は、贈与時の評価額を相続財産としてみなして相続税を計算します。
しかし改正後は基礎控除額を控除した残額を、相続財産に加算するため、相続税の課税対象額が低くなります。
<改正後の例>
改正前 | 改正後 |
---|---|
贈与時の評価額:3,000万円 | 贈与時の評価額:3,000万円-110万円=2,890万円 |
また令和6年度1月以降に災害などによって不動産の被害を受けた場合、災害による被災価額を控除した残額が相続財産としてみなされます。
一方で被相続人が生前中に贈与していた財産は、相続が発生する3年間は被相続人の財産としてみなしておりましたが、改正後は7年に延長となったため、より相続税が課せられる可能性が高まりました。
ただし、延長された4年間に贈与により取得した財産の価額については、総額100万円未満であれば加算されません。
4 相続時精算課税制度は、どんな場合に活用すべき?
相続時精算課税制度は「地価上昇が見込まれる土地がある」「収益性の高い不動産を所有している」「相続する人が決まっている」などの際に有効です。それぞれ解説していきます。
地価上昇が見込まれる土地がある
将来的に地価上昇が見込まれる土地などであれば、相続時精算課税制度を利用して相続税の節税が可能です。相続時精算課税制度を利用して贈与した財産に関しては、贈与時の評価額を相続財産としてみなして相続税を計算します。
そのため贈与時は畑だった土地が区画整理地になった場合などは贈与時の評価額の方が低いため相続税の節税にもつながるということです。
一方で贈与時より相続発生時の方が、地価が下落してまった場合、相続税は増えることにもなるため、確実に将来価値が上昇するというケースに有効な制度です。
収益性の高い不動産の贈与は相続税の節税になる
アパートやマンションなど、毎月家賃収入が得られる不動産を相続時精算課税制度を使って贈与すれば、相続税の節税につながる可能性も高いです。
家賃収入が得られるということは、毎月貯蓄が増えるということになるため、相続税の課税対象額が増えてしまいます。
しかし相続時精算課税制度を利用して贈与しておけば、毎月の家賃収入は受贈者(贈与を受けた人)の財産となるため、贈与者の相続財産が増えるリスクを抑えることにもつながります。
例えば毎月20万円の家賃収入があると仮定すると、10年間で2,400万円もの課税対象額の増加を防ぐということになります。もちろん家賃収入を使っているのであれば相続税の課税対象額は増えませんが、貯蓄に回している場合は相続時精算課税制度を利用して、収益物件を贈与しておくのも一つの方法と言えるでしょう。
相続する人が決まっている
被相続人の生前中に財産の贈与を受けた人は、相続時にも遺産を相続するケースが多いため、相続する人が決まっている場合に有効活用できます。
もちろん法定相続人には遺留分があるため、生前中に贈与された財産を100%相続できるという保証はありません。とはいえ、あらかじめ贈与している財産であれば、他の相続人は違う財産を相続しようと考える方も多いです。そのため相続人同士の遺産トラブルを防ぐことにもつながります。
この記事の監修者
税理士
税理士。東京税理士会品川支部所属。日本税務会計学会訴訟部門所属。福島健太税理士事務所代表。不動産デベロッパーから税理士に転身した経歴をもつ不動産と税のスペシャリスト。共有持分で不動産を相続される方が相続税を相談する税理士として多くの顧客を得る。趣味は釣り。