共有物分割請求により競売になると|弁護士Q&A
共有物分割請求により競売になると
ご相談内容
北海道札幌市にある土地の相談です。
土地は叔母との共有持分、建物は1階が私、2階は叔母の区分所有となっています。1階はテナントとして貸し出しており、2階は叔母が住んでいます。
先日、叔母からの申し入れで、私が所有する土地の共有持分を買い取りたいと打診がありました。まったく、売る気はないので断ったところ、今度は弁護士から私に打診があり、回答によっては共有物分割請求を行うと言ってきました。
これって、どうなるんですか?
ご相談のポイント
- 区分所有建物の敷地の共有物分割請求の問題点
- 交換による解決策
①区分所有建物の敷地の共有物分割請求の問題点
民法上は、各共有者は、原則、いつでも共有物の分割を請求することができ(民法256条1項本文)、共有者間での分割の協議が纏まらない場合は、共有物分割請求訴訟を提起することができるとされています(民法258条1項)。
但し、分割の対象が区分所有建物の敷地である場合、敷地の分割を認めると、区分所有建物の存立に重大な支障が生じる結果となります。
すなわち、仮に、本件で、共有物分割請求訴訟の結果、敷地が叔母様の単独所有となった場合は、ご相談者様の区分所有建物が収去請求の対象となってしまいます。
また、敷地全体が競売判決により第三者の所有となった場合は、敷地上の区分所有建物全体が収去請求の対象となります。
このため、区分所有建物の敷地に関しては、共有物分割請求を否定する裁判例が有力ではあるものの(東京地裁平成20年2月27日判決など)、他方で、肯定例も散見されるところであり(東京地裁平成23年3月22日判決など)、実際に叔母様から共有物分割請求訴訟を起こされた場合に裁判がどのような結末を迎えるかについては、事前には断定ができないところです。
万一、叔母様の共有物分割請求が認められ、敷地が叔母様あるいは第三者の単独所有となった場合には、ご相談者様の区分所有建物のテナントもまた建物退去・土地明渡を余儀なくされますので、ご相談者様とテナントとの間の損害賠償問題に発展するリスクがあります。
②交換による解決策
本件のような状況における解決策としては、敷地の共有持分と区分所有建物の交換という方法が考えられます。
具体的には、以下の方法が考えられます。
- (1)ご相談者様の敷地の共有持分と叔母様の区分所有建物を交換する
- (2)叔母様の敷地の共有持分とご相談者様の区分所有建物を交換することで、敷地と区分所有建物との法律関係を通常の借地契約に纏める
(1)の場合、敷地は叔母様の単独所有、区分所有建物は全体がご相談者様の単独所有となり、叔母様を賃貸人、ご相談者様を賃借人とする借地契約が成立します。
その上で、2階の叔母様の居住部分については、ご相談者様と叔母様との間で、建物賃貸借契約を結ぶ形になります。
(2)の場合、敷地はご相談者様の単独所有、区分所有建物は全体が叔母様の単独所有となり、ご相談者様を賃貸人、叔母様を賃借人とする借地契約が成立します。
但し、この場合、1階のテナントとの建物賃貸借契約に関しては、賃貸人の地位が、区分所有建物の新所有者である叔母様に移転することになります(民法605条の2第1項)。
なお、交換による解決の場合、金銭的な精算の対象は、交換対象となる敷地の共有持分の価格と区分所有建物の価格との差額になるので、通常の売買での取得と比較して、実際の金銭の支出を抑える効果もあります。
まとめ
区分所有建物の敷地の共有物分割請求を認めると、敷地上の区分所有建物の存立に重大な支障が生じます。
また、敷地の共有物分割請求が認められた場合は、区分所有建物のテナントもまた建物退去・土地明渡を余儀なくされるため、テナントとの間で損害賠償問題に発展するリスクがあります。
解決策として、敷地の共有持分と区分所有建物とを交換し、土地と建物の法律関係を通常の借地契約に整理することが考えられます。
この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。