【松原昌洙が解説】地主とのトラブルに注意!借地権の実家問題基礎知識
【松原昌洙が解説】地主とのトラブルに注意!借地権の実家問題
目次
借地上の建物は、地主とのトラブルに注意!前回の記事では、共有している収益不動産のトラブルについてご紹介しました。
今回は、実家が借地の場合に起こりうるトラブルについて解説します。実家が借地の方は、「借地権とは」「地主と借地人の関係性」について、押さえておきましょう。
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実家が借地権の場合はどうなる?
この項目では、土地と建物の名義が異なっている場合のトラブルについてご紹介します。
借地権とは
借地権とは、土地を借りて、そこに建物を建てる権利のことを指します。
底地権とは、借地権付きの建物が立っている土地の所有権を指します。
地主が借地人に土地を貸して、借地人がマイホームを建てていたとします。
このとき、地主は「底地権」、借地人は「借地権」を有しています。
底地権と借地権は、二つが合わさって初めて所有権になります。
所有権がないと、その土地を好きなように利用することができません。
ですので、地主がいきなり「ここに子どもの家を建てるから出て行って」と借地人に強要することはできないのです。
確かな所有権が存在しない分、扱いが難しいのがこの「底地権」と「借地権」の関係といえるでしょう。
借地権の売却には地主の承諾が必要
借地権付きの建物を共有していた場合、共有者間での合意があっても、不動産全体や自己持分の売却は行えません。
売却するには、必ず地主の許可や承諾など、各種手続きが必要になります。
このように、地主と借地人の関係は、共有名義不動産にも影響を与えます。
名義変更料を巡って、地主とトラブルに⁉
次にご紹介するのは、名義変更料についてのトラブルの事例です。
- 兄弟で借地権付き建物を相続した
- 兄夫婦が住むことになったが、相続登記は行っていない
- 地主から「建物名義が変わるのであれば名義変更料を払ってほしい」と言われた
- 共有者である弟も名義変更料を払う必要があるのか?
名義変更料とは、名義を変更する際にかかる費用で、借地人から地主へ支払います。
事例の場合は、建物が相続で兄弟の共有名義に移っています。
地主としては、「兄夫婦だけが住むのなら、名義も兄個人にするべき。だから名義変更料が発生する」という主張になります。
結論、本事例では、兄が弟の持分を買い取り、兄の単独名義に変更した後、名義変更料を地主に支払うことになりました。
この名義変更料は、相続時に共有名義にせず、最初から兄のみの単独名義としていれば、支払う必要がなかったお金です。
やはり、借地権付きの建物を相続する場合も、共有名義は避けるべきです。
実家の相続から裁判に発展⁉借地非訟とは
底地権を有する地主と、借地権を有する借地人との関係は複雑であり、多種多様です。
地主の方が優位な立場であり、地主が「ダメ」と言ったら借地人はそれに従うのが一般的です。
しかし、全てにおいて地主に決定権があるかといえばそうではありません。
ここで、次の事例を見ていきましょう。
借地非訟とは何か
借地非訟とは、借地人が借地権付き建物を売却したいけれど、地主の承諾が得られない場合に、「地主に代わって裁判所に承諾を得る」ための手続きです。
相続トラブルにより、裁判となった場合の相談事例です。
- 姉妹で借地権付き建物を相続した
- 建物は、姉妹の共有持分として登記している
- 妹は不動産を手放したいが、姉は反対
- 妹の持分のみ売却したい旨地主に伝えるが承諾してもらえない
- 何とか妹の持分だけを売却して現金化することはできないか?
相談者(妹)は、借地権付き建物を売却したいと考えています。
これはつまり、地主との契約関係も解除し、購入した他者が新たに地主と契約を結ぶことになります。
地主からすれば、地代を払ってくれる人がいきなり変わるわけなので、新しい借地人が地代を払ってくれないかもしれないというリスクもあります。
そのため、すんなり地主が持分売却を承諾してくれないケースは、珍しくありません。
相談者は、持分売却を諦めるしかないのでしょうか?
借地非訟を有利に進めるには専門家の協力が必要
今回のケースでは、裁判所に「借地非訟(ひしょう)事件」として、借地権譲渡許可の申し立てを行うことになりました。
事件というと不穏なイメージになりますが、訴訟ではなく非訟となります。
つまり、平たく言えば「借地権の移動を地主に代わって裁判所に許可してもらう」ための申し立てです。
相談者は、当社が提携する弁護士や司法書士を集めた専門家チームに依頼し、借地非訟の手続きを進めました。
時間と手間は掛かりましたが、無事に裁判所の許可が下り、希望通り借地権の持分売却を達成できたのです。
借地非訟は、自分の力だけで進めるには、かなりの労力が必要になります。借地権の専門家に相談しサポートを受けることで、有利かつスムーズに物事を進められます。
まとめ
今回ご紹介した事例のほかにも、借地非訟事件でトラブルを解決できるケースはいくつかあります。
本書では、多数の事例をわかりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
次回は、相続の当事者となる前に、知っておいてほしい大切なことをご紹介します。
この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。共有持分を始めとした相続トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。