【松原昌洙が解説】今からやっておきたい実家の相続対策基礎知識
【松原昌洙が解説】今からやっておきたい実家の相続対策
目次
一家の大黒柱が亡くなると、仲の良い兄弟姉妹が遺産相続をきっかけに関係が崩壊してしまうことが多くあります。
本章では、相続トラブルを回避するために必要なことやするべきことを解説します。相続トラブルを抱えている方や相続の知識を身につけたい方は、ぜひご覧ください。
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円満に必要なのはお互いを思いやる「心がけ」
相続トラブルを避けるには、相続財産の把握や遺言書の作成といった手続きを事前に進めておくことが有効です。
しかしいくら手続きをしても、家族同士で利害や感情がぶつかり合い、遺産の取り分でもめて結局関係が悪くなることが多々あります。
トラブルなしで残された家族が仲良く暮らすには、手続きだけではなくお互いを思いやる心がけが必要です。
心がけに大切な6ヶ条
心がけに大切な目安を、以下の6ヶ条にまとめました。
- 相続人は少しずつ譲り合う心を持つ
- 遺産分割に相続人以外の人を入れない
- お墓を守ってくれる人にはそれなりの配慮を払う
- 生前贈与は公平・平等を基本とする
- 親の介護負担は兄弟みんなで均等に分ける
- 親と同居している兄弟姉妹には感謝する
兄弟はそれぞれ環境や経済状況などが異なるため、一人ひとりの主張があります。
相続では公平・平等・均等が基本であり、誰も損をしないことが重要です。
遺産をご自身がより多くもらっていると感じたら、一部を妹や弟に譲歩する心も持ちましょう。
配偶者である妻が夫(相続人)に入れ知恵して取り分を多くもらおうと考えるケースもあるため、遺産相続には当事者以外の人が口出ししないことも大切です。
親と同居したり、墓を守ったりしている兄弟姉妹には感謝を伝えましょう。
専門家への相談・依頼で気をつけること
弁護士や税理士、不動産鑑定士や司法書士など、日本には様々な専門家がいます。
当事者間での解決が難しい相続トラブルでも、専門家が仲立ちすれば早期解決が期待できます。
また、遺言書の作成や不動産の鑑定などの手続きでは、専門家への相談・依頼が必要です。
専門家への相談・依頼時に気をつけることは、以下の通りです。
- 相続に精通している専門家を選ぶ
- 裁判しか提案してこない弁護士に注意
- 不動産鑑定士は料金が安い人を探す
前提として、相続を専門分野としていることが大切です。
専門家の見極めは当事者同士の相性もあるため一概には言えませんが、依頼者側の話しを丁寧に聞いてくれる、自分にあった解決策を提案してくれる、といった基本的な対応に違和感のない人を選びましょう。
中には、自身の儲けだけを考えてすぐに裁判の話しを出してくる悪徳な弁護士も居ます。
また、不動産鑑定士は国家資格者であるため、国の定めに基づき鑑定を行います。
そのため、不動産鑑定士によって鑑定額が大きく異なることはありませんので、できるだけ依頼料が安い鑑定士を選ぶと良いでしょう。
遺言書は相続トラブルを回避できる切り札
昭和22年までは、「一家の主が亡くなったら長男が財産をすべて受け継ぐ」ということが法律上の手続きでありました。
これを長兄相続といいます。
しかし、核家族化(親と子どもの2世代からなる家族)が進んで長兄相続が通用しなくなったことで、兄弟姉妹間での相続トラブルが年々増えています。
このようなトラブルを回避できるのが、遺言書です。
配偶者(妻または夫)に財産を多く相続させたい場合や財産の大半が不動産である場合などに、遺言書が必要になります。
遺言書の注意点は、以下の通りです。
- 土地や建物は登記簿に記載されている所在・地番・家屋番号を書く
- 特定できる日付を書く
- 財産目録(資産や負債の詳細が書かれたもの)を作る
- 遺留分(遺族が最低限もらえる遺産の一定割合)に気をつける
- 感謝の言葉などの付言事項を述べる
遺言書は家族同士の争いを回避できる重要な書類であるため、生きているうちに残しておきましょう。
認知症対策に有効な「成年後見制度」と「家族信託」
近年認知症になる高齢者の方が増え、同時に認知症による判断能力の低下が相続に影響を与えています。
認知症対策で有効なのが、「成年後見制度」と「家族信託」の2つの制度です。
成年後見制度とは?
成年後見制度は、認知症にかかって判断能力が不十分になった方に後見人をつけ、法的に保護する制度です。
判断能力がある時に本人が後見人を選ぶ「任意後見制度」と、本人の判断能力が低下または失われた時に家庭裁判所が後見人を選ぶ「法定後見制度」の2種類があります。
成年後見制度は第三者から本人の財産上の利益を守ることを目的とする制度です。
しかし、毎年家庭裁判所へ報告義務があることや後見人を途中で辞退できないといったデメリットもあるため、相続対策としては使いにくい面があります。
家族信託とは?
家族信託は、本人の大切な資産と想いを家族に託す制度です。
元気なうちはご自身で財産を使い、本人が認知症などを発症してたとえば長男(受託者)に名義が移動した時、長男には本人の財産を処分・売却できる権利があります。
家族信託は認知症対策として利用されることが多くなり、本人の介護費用の捻出や不動産の売却といった、成年後見制度や遺言ではできないことができます。
一方、すべての財産を信託財産にはできない点や家族信託の専門家への相談料は高めになるなどがデメリットです。
備えのないまま相続が発生した時の対処法
相続対策は事前に準備しておけば問題ありませんが、葬儀や通夜が終わった後に相続のことを考え始めるケースが多くあります。
相続放棄は3ヶ月以内など、短い期限の手続きもあるため注意が必要です。
とくに、準備なしで遺産分割の話し合いを進めると兄弟姉妹同士でトラブルになりかねないため、必ず期限と方針だけは取り決めて文書を交わしておきましょう。
まとめ
身内同士による相続トラブルを避けるためには、専門家への相談・依頼や遺言書の作成、家族信託制度の利用などの手続きが必要です。それでも争いが発生する場合は、最後にはお互いを思いやる心が解決の糸口になります。
相続不動産をめぐるトラブルは全国各地で起こっている身近な問題です。ぜひ、本記事と書籍『不動産相続のプロが解決! 危ない実家の相続』を参考にしてみてください。
本書が、相続トラブルの解決のきっかけになれば幸いです。
- 不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続【第1章】の解説はこちら:なぜ今相続トラブルが増えているのか。
- 不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続【第2章】の解説はこちら:共有名義不動産を正しく理解すれば、トラブルは防げる。
- 不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続【第3章】の解説はこちら:トラブルを複雑化させる厄介な借地権相続
- 不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続【第4章】の解説はこちら:相続法の改正から考える家族の在り方
- 不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続【第5章】の解説はこちら:今からやっておきたい実家の相続対策
この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。共有持分を始めとした相続トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。