共有持分の買取請求とは?他の共有者の持分を買い取る方法を解説
共有持分の買取請求とは?他の共有者の持分を買い取る方法を解説

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共有持分とは、不動産を複数人で共同所有している状態のことです。
相続や離婚などで共有不動産を取得した場合、共有者全員の合意なしには売却や賃貸などの処分ができず、結果としてトラブルに発展するケースが少なくありません。
そんな時に共有状態を解消する有効な手段となるのが、共有者が他の共有者に対して持分を買い取りさせてくれるよう請求できる「共有持分買取請求」です。
この記事では、共有持分買取請求権の仕組みや行使方法、注意点などを解説します。
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共有持分買取請求には3種類ある
共有持分買取請求には、以下の3種類があります。
- 共有持分の「買取請求権」を行使する買取請求
- 他の共有者への”お願い”をベースとした買取請求
- 「共有物分割請求」による買取請求
共有持分買取請求の種類①:共有持分の「買取請求権」を行使する買取請求
共有不動産の維持管理費や税金を1年以上負担しない共有者がおり、その結果、他の共有者に不利益が生じている場合、他の共有者がその持分を強制的に取得可能な「買取請求権」を行使できます。
この権利は、共有物の分割協議(共有者同士での話し合い)がまとまらない場合の手段の一つであり、民法に規定された共有者の権利です(民法第252条、第253条第3項)。
「所在等不明共有者の持分取得制度」と「買取請求権」の違い
「買取請求権」と似た制度に、「所在等不明共有者の持分取得制度」がありますが、これらはどちらも共有状態を解消するための手段であるものの、対象となる共有者や手続き、制度ができた時期などに違いがあります。
所在等不明共有者の持分取得制度は、2023年(令和5年)4月1日施‗・2021年(令和3年)民法改正と、比較的最近できた制度で、所有者不明土地問題の解決を目的の一つとして導入されました。
この制度は、共有者の中に、どこにいるのか、連絡先もわからない「所在等不明共有者」がいる場合に利用できます。裁判所に申し立てを行い、他の共有者が、所在等不明共有者の持分を時価で取得できます(民法第262条の2)。
一方、買取請求権は、共有物の分割に関する規定(民法第252条、第253条)の中に、以前から存在していた権利です。
ただし、2021年(令和3年)の民法改正で、共有物の管理に関する規定(民法第252条)が見直され、共有物の管理費用の負担義務を1年以上履行しない共有者がいる場合に、他の共有者が相当の償金を支払ってその持分を取得できることが明確化されました(第252条第5項)。
この買取請求権は、所在不明である必要はなく、単に共有不動産の維持管理費や税金を負担しない共有者に対して行使できます。
このように、両制度は共有持分を取得できるという点は共通していますが、対象者や手続きが異なります。
所在等不明共有者の持分取得制度 | 買取請求権 | |
対象となる共有者 | 所在等不明共有者(どこにいるか、連絡先もわからない共有者) | 共有不動産の維持管理費や税金を1年以上負担しない共有者 |
手続き | 裁判所への申し立てが必要 | まずは内容証明郵便で催告、その後、買取請求権を行使する旨を通知 |
持分の取得方法 | 時価での取得 | 当事者間の協議で価格を決定(合意できない場合は不動産鑑定士による鑑定評価を参考にすることが多い) |
根拠となる法律 | 民法第262条の2 | 民法第252条、第253条 |
強制力 | 裁判所の決定に基づき強制的に持分を取得できる | 形成権であり、買取請求権を行使する旨の意思表示をすれば、相手方の承諾なく売買契約が成立したことになる(ただし、価格について争いがある場合は裁判になる可能性もある) |
制度ができた時期 | 2023年(令和5年)4月1日施行2021年(令和3年)民法改正 | 共有物の分割に関する規定は以前から存在。2021年(令和3年)の民法改正で、共有物の管理費用の負担義務を1年以上履行しない共有者がいる場合に、他の共有者が相当の償金を支払ってその持分を取得できることが明確化。 |
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共有持分の「買取請求権」を行使する流れ
共有持分の買取請求権を行使する流れは、以下の通りです。
- 他の共有者に対して、未払いの維持管理費・税金を催告する
- 共有持分の買取請求権を行使する旨を通知する
- 持分の買取価格を決める
- 対価を支払う
- 持分移転登記を行う
1.他の共有者に対して、未払いの維持管理費・税金を催告する
共有不動産の維持管理費や税金が未払いの場合、まずは負担義務を履行していない共有者に対し、支払いを催告します。
催告は、内容証明郵便など、後々の証拠となる送付方法を選択することが肝要です。
これにより、未払い金の請求を行った事実を明確に残せます。
口頭での催告は避け、証拠が残る形で、他の共有者へ未払い分の支払いを求めましょう。
2.共有持分の買取請求権を行使する旨を通知する
共有持分の代金が催告後も支払われない場合、まずは買取請求権の行使を検討する旨を、他の共有者へ内容証明郵便で通知します。
それでも支払いがないまま1年以上が経過した時点で、共有持分の買取請求権を行使する、という内容の通知を相手方に行います。
この場合も、後の証拠とするため、内容証明郵便で送付するのが一般的です。
3.持分の買取価格を決める
共有持分の買取価格は、当事者間の協議で決めるのが基本です。
しかし、価格について合意に至らないケースも考えられます。
そこで、一般的には、不動産鑑定士に依頼して査定を行います。不動産鑑定士による鑑定評価は、当事者間で合意できる適正な買取価格を見出すための参考となり、円滑な取引に役立ちます。
4.対価を支払う
共有持分の買取価格が決定した際は、持分を買取させてくれる共有者へ対価(または相当の償金)を支払います。
5.持分移転登記を行う
対価の支払いが完了したら、法務局で「持分移転登記」を行います。
登記が完了してはじめて正式に買取が完了し、買取側は単独所有者となるか、自身の持分が増加します。
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共有持分買取請求の種類②:他の共有者への”お願い”をベースとした買取請求
共有持分の買取請求には、法的強制力を持たない、協議ベースの”お願い”としての請求があります。
この方法のメリットは、話し合いによって柔軟な解決を目指せる点です。
例えば、買取価格や支払い方法について、互いの事情を考慮しながら、合意形成を図れます。また、裁判手続きに進む場合と比較して、時間や費用を抑えられる可能性があります。
しかし、デメリットとして、相手方が買取に必ずしも応じる義務はない点が挙げられます。
交渉が決裂した場合、解決までに時間がかかることや、最終的に共有物分割請求訴訟に発展する可能性も考慮しなければなりません。
共有持分買取請求の種類③:「共有物分割請求」による買取請求
共有持分の買取請求において協議がまとまらない場合、民法上の「共有物分割請求」という法的手段を用いる方法があります。
これは、裁判所を通じて共有状態の解消を求めるものであり、最終的には裁判所の判決によって共有物の分割方法が決定されます。
共有物分割請求では、現物分割、換価分割、そして全面的価格賠償による分割(他の共有者の持分を金銭の支払いを通して取得し、単独所有にする分割方法)のいずれかが選択されます。
共有持分買取請求を「共有物分割請求」によって実現するためには、この全面的価格賠償を裁判所に認めてもらう必要があります。
この方法のメリットは、法的強制力があるため、最終的には共有関係を解消できる点です。
しかし、裁判手続きには時間と費用がかかること、必ずしも希望通りの結果になるとは限らない点がデメリットとして挙げられます。
また、共有不動産の状態や共有者間の関係性によっては、共有物分割請求自体が認められないケースもあるため注意が必要です。
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共有物分割請求による買取請求の流れ
共有物分割請求による買取請求は、以下の流れで進みます。
- 共有物分割協議
- 共有物分割調停
- 共有物分割訴訟
1.共有物分割協議
共有不動産の分割を検討する場合、まずは共有者全員で分割方法(買取価格や具体的な分割方法など)を協議します。
全員が合意に至れば、協議による分割が成立し、他の共有者の共有持分を買い取ることも可能です。共有持分の買取請求は、この協議の段階で合意が得られれば実現します。
なお、合意内容を協議書にまとめ、公証役場で認証を受けると、協議書に法的効力を持たせることができます。
2.共有物分割調停
共有物分割協議が不調に終わった際は、家庭裁判所に対する調停の申し立てが可能です。
調停では、調停委員が当事者間の話し合いを仲介し、解決に向けて双方の意見を丁寧に聞き取りながら、解決案の提示や助言を行います。
調停が成立すると、調停調書が作成されます。
この調停調書は、公証役場で認証を受けることで、法的効力、あるいは法的拘束力を持つことになります。
3.共有物分割訴訟
調停でも合意に至らない場合は、共有物分割訴訟を提起します。
訴訟では、裁判官が証拠や当事者の主張に基づいて、共有物の分割方法を判断します。裁判所が全面的価格賠償を認めれば、他の共有者の共有持分の買取が可能となり、判決内容は強制執行できます。
ただし、訴訟は時間や費用がかかるため、弁護士と相談の上、慎重に進める必要があります。
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共有持分買取請求を起こすケース
共有持分買取請求は、以下のようなケースで検討されます※。
- 共有不動産を有効活用したいが、他の共有者の同意が得られない
- 共有不動産を売却したいが、共有者の中に反対する人がいる
- 共有者の一部が共有不動産の使用を独占している
- 他の共有者から共有持分を買い取り、単独所有者になりたい
- 共有持分を相続したが、他の共有者と協力して不動産を管理・活用する意思がない
※主に、【他の共有者への”お願い”をベースとした買取請求】【「共有物分割請求」による買取請求】のいずれかの方法が検討されます。もし、維持管理費や税金を1年以上負担しない共有者がいる場合にのみ、【共有持分の「買取請求権」を行使する買取請求】が選択肢に入ります。
共有不動産を有効活用したいが、他の共有者の同意が得られない
共有不動産の建て替え、大規模リフォーム、用途変更には、原則として共有者全員の同意が必須です(民法251条)。
しかし、意見の不一致で計画が進まないケースも珍しくありません。このような場合、他の共有者の共有持分を買取させてもらう「共有持分買取請求」が有効な手段となり得ます。
買取請求によって共有関係から離脱し、単独所有者になれば、自身の意思のみで不動産の建て替えやリフォーム、用途変更といった自由な活用が可能となります。
共有不動産を売却したいが、共有者の中に反対する人がいる
共有不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。そのため、一人でも反対する共有者がいると売却は困難になります。
このような場合、他の共有者に対して共有持分買取請求を行い、全ての持分を買い取ることで単独所有の不動産として売却できます。
共有者の一部が共有不動産の使用を独占している
共有不動産は、各共有者がその持分に応じて使用する権利を有します。
しかし、特定の共有者が他の共有者の利用を妨げ、独占的に使用しているケースも存在します。このような状態は、他の共有者の権利を侵害しているため、是正を求める必要があります。
話し合いだけで解決しない場合、共有持分買取請求によって、独占している共有者の持分を買取し、問題解決を図ることができます。
他の共有者から共有持分を買取し、単独所有者になりたい
共有不動産を単独で所有したい場合、他の共有者全員から持分を買い取る必要があります。
交渉がスムーズに進めば良いのですが、価格や条件で折り合いがつかないことも少なくありません。
そのような場合でも、共有持分買取請求権を行使することで、裁判所の判断を仰ぎつつ、共有持分の買取を進められる可能性があります。
共有持分を相続したが、他の共有者と協力して不動産を管理・活用する意思がない
相続によって共有持分を取得した場合、他の共有者と協力して不動産を管理・活用する必要があります。
しかし、協力関係がうまくいかない場合、買取請求によって共有関係を解消し、単独所有者になることで、不動産の管理・活用を自分自身で決めることができるようになります。
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他の共有者から共有持分買取請求を起こされた場合の対処方法は?
他の共有者から共有持分買取請求を起こされた場合の対処方法は、以下の通りです。
- 他の共有者の持分を買い取る
- 買取を希望する共有者に自分の共有持分を売却する
- 第三者に自分の共有持分を売却する
【不動産を手放したくない】他の共有者の持分を買い取る
共有不動産を手放したくない場合は、買取請求をしてきた共有者の持分を買い取ることを検討しましょう。
資金の準備が必要になりますが、共有関係を解消し、単独所有者になることが可能です。
【提示金額に納得】買取を希望する共有者に自分の共有持分を売却する
他の共有者から提示された買取金額に納得できる場合は、自身の共有持分を売却し、共有関係から離脱するのも一つの選択肢です。
売却によりまとまった資金を得られ、共有関係にまつわる煩わしさから解放されます。
ただし、売却後の税金や諸費用については事前に確認しておきましょう。
【他の共有者に売却したくない】第三者に自分の共有持分を売却する
他の共有者には自身の持分を売却したくない、あるいは、より高値で売却したいと考える場合は、第三者への売却を検討するのがおすすめです。
ただし、共有持分は不動産の活用に制限があることから、買い手がつきにくいため、共有持分専門の仲介業者や買取業者を依頼するのが一般的です。
共有持分の買取業者と仲介業者の違いは、以下の記事で詳しく解説しています。共有持分の売却時の業者選びの参考にしていただければ幸いです。
関連記事:共有持分の売却先は、買取業者と仲介業者どちらがいい?買取業者の目的は何?

自己持分のみの売却なら、共有持分買取請求よりもスムーズに共有状態を解消できる
共有関係を解消したい場合、共有持分買取請求は有効な手段ですが、他の共有者との交渉や、場合によっては裁判手続きが必要になることもあります。
よりスムーズな解決を望むのであれば、自身の共有持分のみを第三者に売却する方法も検討する価値があります。
共有持分の売却にあたっては、他の共有者の同意が不要なため、自身の意思だけで手続きを進められます。
ただし、共有持分は、一般の不動産に比べて買い手を見つけるのが難しい傾向にあります。
そのため、独自の「買い手ネットワーク」を持つ、センチュリー21中央プロパティーのような仲介業者に売却を依頼するのが、早期かつ高額での持分売却を期待できる手段と言えます。
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まとめ:相談&トラブル解決実績4万件!持分売却は中央プロパティーにお任せ下さい
共有持分の買取請求は、共有状態を解消するための有効な手段ですが、共有者との交渉や法的手続きなど、専門的な知識が必要となる場面も少なくありません。
また、共有持分の状況によっては、他の共有者への買取請求が困難なケースや、想定外のトラブルに発展する可能性もあります。
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この記事の監修者
弁護士
弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。不動産の共有関係解消など相続と不動産分野の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。