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共有者が居住中でも、持分の売却はできる?

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共有者が居住中でも、持分の売却はできる?

ご相談内容

2年前に、結婚を前提とした彼と一緒に住宅を購入しました。(私:彼=4:6の持ち分割合)

最近になり、DVやモラハラ気質な一面が見えてきたため、別れて家を出ていきたいと思っています。

話し合いを重ねていますが、彼は別れるつもりはないとのことで、私の持分を彼に買い取ってもらうことはできなさそうです。貯金もあまりないため、第三者へ持分を売却して、そのお金で一人で新しい生活を始めたいです。

共有者が居住中の物件でも持分を買ってくれる人はいるのでしょうか。

ご相談のポイント

  • 共有持分の第三者への売却
  • 共有持分の売却条件
  • 目指すべきは何か

①共有持分の第三者への売却

不動産が共有名義である場合、全体で売却するためには共有者全員の同意が必要になります。(民法251条1項)

また、共有者である交際相手に共有持分を買って貰う場合も、当然、相手の同意が必要になります。(もっとも、たとえ、相手に買い取る意思があったとしても、買い取るだけの資力が現実になければ、結局、買取りの話はまとまりません)

相手共有者との合意が困難な場合、共有者として取れる対策は、(1)共有物分割請求訴訟と、(2)共有持分の第三者への売却が考えられます。

但し、前者の場合は、裁判に多くの時間と費用を要することになりますし、何より、裁判が終わるまで、法廷の場で交際相手と正面から争うことになるため、心理的・精神的な負担も重くなることが予想されます。

また、仮に、交際相手の側から共有物分割請求訴訟を起こしてきた場合は、共有者である限り、訴訟への当事者としての参加が避けられません。

他方、共有持分の第三者への売却は、交際相手の同意がなくとも、単独で行なうことが可能です。(民法206条)

何より、共有持分を第三者に売却した場合は、その時点で不動産の共有関係から離脱しますので、ご自身で交際相手と協議・裁判をする負担から解放されるというメリットがあります。

②共有持分の売却条件

とはいえ、共有持分の買主は、何をするにも共有者である交際相手との協議が必要となるので、そもそも共有持分の購入を検討する人は限られてきます。

少なくとも、マイホームを探しているような一般の個人の方が購入することは考えられず、購入層は、事実上、法人や投資家のような、いわゆるプロに限られてきます。

さらに、本件の場合、共有持分の買主の立場からすると、相手共有者が既に共有不動産を占有しているという状況は、大きなマイナス要素です。

まず、特定の共有者が他の共有者の了解なく共有物を単独で占有している場合でも、他の共有者は、原則として占有共有者に対して明渡を請求できません。(最高裁昭和41年5月19日判決)

他方、占有共有者に対し、持分割合に応じた賃料相当金の支払いは請求できるものの(最高裁平成12年4月7日判決)、相手に支払う資力がない場合は、額面倒れで終わるリスクがあります。

そのため、ただでさえ共有持分自体の需要が低いところ、占有共有者の存在により、ますます買い手が見つけにくくなり、仮に買い手が見つかった場合でも、全体売却等と比較すれば、売買の条件が厳しくなることは否めません。

③目指すべきは何か

ですが、前述のとおり、共有関係から離脱し、協議・裁判の負担から解放される=交際相手との縁を切れるという、金銭では測れないメリットが、共有持分の売却にあることも事実です。

ご相談者様の現在の状況・お悩みを踏まえると、お金を含めた『二兎』を追うのではなく、トラブル解決という『一兎』を目指すことが宜しいのではないかと思料いたします。

まとめ

相手共有者との合意が形成できない場合、共有者の立場からは、共有物分割請求訴訟と、共有持分の第三者への売却が、選択肢として考えられます。

但し、共有物分割請求訴訟は、時間・費用面の負担の他、相手共有者と争う心理的・精神的な負担も重くなります。

これに対し、共有持分の第三者への売却に関しては、もともとの需要が低い上、相手共有者が占有しているケースでは、買主にとってさらに制約が大きいので、売買の条件が厳しくなるというデメリットは存在します。

しかし、同時に、共有持分の第三者の売却には、共有関係から離脱し、自ら相手共有者と協議・裁判をする負担から解放されるという、金銭でだけでは測れないメリットがあります。

方針選択の上で大事なのは、いま何を優先するべきかを自分の中で明確にすることです。

この記事の監修者

都丸 翔五トマル ショウゴ

社内弁護士

当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。

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