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共有持分とは?メリットやデメリット、売却・放棄の方法と注意点

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共有持分とは?メリットやデメリット、売却・放棄の方法と注意点

何らかの事情で1つの不動産を複数人で所有するとき、必ずしも所有する割合が均等になるとは限りません。1つの不動産の所有者がそれぞれ所有する割合のことを共有持分といいます。

ただし、この共有持分があることでトラブルが起きてしまうことも珍しくありません。特に、不動産を兄弟で相続した場合や夫婦でマイホームを購入する場合、安易に共有名義にすると後々大きなトラブルに繋がる可能性があります。

この記事では、共有持分のメリットデメリットやよくあるトラブルについて解説します。

共有持分とは?

まず、共有持分がどのようなものなのかを解説します。

共有持分の基礎知識

所有権割合は、不動産購入時であれば出資額、相続による取得であれば、法定相続分や遺産分割協議等によって決まります。

不動産を共有持分するケースは、以下のようなものが挙げられます。

  • 夫婦で資金を出し合って不動産を購入した
  • 相続や贈与により複数の兄弟姉妹で不動産を分け合った

注意したいのはあくまで共有持分は権利の割合であり、実際の不動産における面積などではないということです。

共有持分の基礎知識

権利自体は、割合に関係なく不動産全体に及びます。

そのため、不動産全体を売却するなどといった場合は、所有権を持っている全員の同意を得る必要があるのです。

持分割合について詳しく知りたい方はこちら ≫

共有持分の考え方

共有持分の割合の決め方ですが、どのようにして不動産を取得したかによって考え方が異なります。

ローンを組んで不動産を購入した場合の計算式

ローンを組んで不動産を購入した場合は、以下のような計算式で求められます。

出資額÷不動産の価格=持分割合

例えば、8,000万円の不動産を2人で購入した場合を考えてみましょう。このとき、Aさんが6,000万円を出資し、Bさんが2,000万円を出資したとします。この場合、各人の持分割合は以下のように計算されます。

Aさん:6,000万円÷8,000万円=0.75
Bさん:2,000万円÷8,000万円=0.25

したがって、2人の持分割合はAさんが75%(持分4分の3)、Bさんが25%(持分4分の1)となります。共同出資した場合はより高い額を払った人の共有持分が多くなると覚えておきましょう。

相続で不動産を共有する場合

相続で不動産を取得した場合、主に以下3つの方法で割合は決まります。

  • 法定相続分に従う
  • 遺言書の内容に従う
  • 遺産分割協議で決める

まず1つ目は法律で定められた法定相続分に従うケースです。不動産を持っていた被相続人との関係性によって、財産をどれくらい相続するのかが決められています。

夫が死亡し、妻・子ども2人に相続する場合を考えてみましょう。このケースでは妻に持分2分の1、子どもにはそれぞれ持分4分の1ずつ相続されます。

2つ目は遺言書に従うケースです。このケースは被相続人が遺言書を残しているときに適用されます。遺言書がある場合は、被相続人の意思が何よりも優先されます。したがって、遺言書に書かれている割合に沿って、不動産含む財産が相続されます。

そして3つ目は遺産分割協議で決めるケースです。土地や建物のようなきっぱり分けるのが難しい財産が相続対象に含まれているときに用いられる決め方です。

遺産分割協議とは、遺産をどのように引き継ぐかを決めるための相続人全員による話し合いのことを指します。遺産分割協議は相続人全員で行い、全員が納得する形で遺産相続が行われることを目指します。

共有持分のメリット

共有持分のメリットは、以下の3つです。

  • ローンが組みやすくなる
  • 相続税の節税になる
  • 税金の控除が受けられる

ローンが組みやすくなる

不動産は高い買い物ですから、通常の場合はローンを組んで購入します。ローン審査が通るかは、契約者の収入や資産などにより決定しますが、ある程度安定した収入がないとローン審査は通りません。

そこで登場するのが、共有名義による購入です。分かりやすい例が、夫婦で家を買う場合。共働きで夫も妻も働いているのであれば、ペアローンなどを活用することで審査が通りやすくなります。

相続税の節税になる

不動産の所有権を持つ人が死亡した場合、相続税が発生します。相続税は不動産の評価額に対して計算が行われるのですが、共有名義であれば共有持分の割合が課税対象となるのです。

例えば評価額5000万円の不動産を夫婦で50%ずつ共有持分として持っていたとします。このとき夫が死亡すると妻に相続され相続税がかかってきますが、夫の共有持分は50%ですから2500万円が課税対象となるのです。

税金の控除が受けられる

確定申告ではいろいろな控除が用意されていますが、注目したいのは住宅ローン控除です。
年末の住宅ローン残高から0.7%の金額を控除できるという制度で、例えば共働き夫婦が共有名義で住宅ローンを組んでいれば夫婦の両方が住宅ローン控除を受けられることになります。

また、居住用財産を売却する場合3000万円の特別控除が適用されるのもポイント。住宅ローン控除同様、夫婦の共有名義で所持している不動産であれば双方3000万円の特別控除を受けられるため、合計で6000万円も控除できるわけです。

共有持分のデメリット

共有持分のデメリットは以下の通りです。

  • 自由に不動産を売却できない
  • 共有者とトラブルになる可能性がある

自由に不動産を売却できない

共有名義の不動産全体を売却する場合、共有者全員が売却に同意する必要があります。そのため、すぐに手放したいと思っていても、全員の承諾を得られない限り売ることはできません。

ただし、自身の共有持分そのものは個人の判断で売却が可能です。その場合、共有持分に応じた金額になるので、不動産全体を売るよりも低くなってしまうことに注意しなければなりません。

共有者とトラブルになる可能性がある

共有持分は、相続の対象になります。長年共有状態が続き、相続が複数回発生すると、共有者は増え続け、誰と共有状態なのか分からなくなってしまう恐れがあるので注意しなければなりません。

また、共有者と連絡が取れないケースも多く、その場合は共有者の同意を得るための意思確認ができず、売却や建て替えなどが難航します。

共有持分のトラブル事例

共有名義についてのメリットとデメリットをご紹介しました。共有名義にすることは、価格の高い不動産であってもローンが組みやすくなる可能性があるなど、一見メリットが多いように感じられるかもしれません。

しかし、共有者が複数いるということは、所有している不動産に対して人間関係が複雑に絡んでくるかもしれないということでもあります。人間関係が発生してくる以上、何らかのトラブルが絶対に起こらないとは言い切れません。
さらに、購入から時間が経っている不動産の場合、権利関係が複雑になってしまうこともあるなど、トラブルの発生する可能性は高くなる可能性があるでしょう。

ここでは、共有持分があることでどのようなトラブルが考えられるのか具体的にご紹介していきます。

共有持分を持つ1人が他の共有者の権利を害するトラブル

所有権は共有持分を持つ全員が持っているわけですから、そのうちの誰が不動産を使用しても問題はありません。
しかし、ほかの共有者に断りなく住み続けている、家賃を支払っていないといったように、ほかの共有者の権利を害するような場合はトラブルになりやすいです。

共有持分の不動産の活用方法などで全員の同意が得られないトラブル

不動産にはさまざまな活用方法があります。人を住まわせて家賃収入を得たい、別荘として利用したい、売却したいなど、人によって考えは異なるでしょう。ですが共有持分がある場合、その不動産の利用方法を決めるためには共有持分の割合が全体の過半数以上になるように、全体売却の場合には全員の同意を得なくてはいけません。

例えば、A、B、Cが共有名義で住宅を所持している場合、Aが共有者であるB、Cの同意を得ず住宅を賃貸として第三者に貸し出していたとします。本来同意を得るべきところを無視してAの独断で行っているため、BとCは第三者に退去するように指示できるのです。

例のようなケースでは、Aは第三者から損害賠償を請求される恐れもあります。たとえ解決しても、今後の関係は良くはならないでしょう。

共有持分になっている私道のトラブル

私道の共有持分が原因で発生するトラブルもあります。私道とは、個人や団体が所有権を有している道路のことを指します。1つの私道に対して複数の土地が面している場合、その私道に接している全ての土地の住民が道路を利用できるようにした所有権のことを、私道持分といいます。

私道持分を所有することで、その私道の通行や掘削が可能になります。しかし、状況によっては、ライフライン設備のための掘削工事や通行ができない場合があります。

ここで問題になるのは、私道持分の共有者全員の同意が得られないと工事などが進められない点です。私道を活用する際には、共有者の承諾が必要となり、この過程でトラブルに発展することがあります。共有者の意見が割れて交渉が難航すると、計画していた工事が滞ることも起こり得ます。

関連記事:共有持分の私道を含む不動産を購入するには?知っておきたい権利とトラブル事例を解説

共有持分を売却するには? 

ここからは共有持分の分割について解説します。誰かと一緒に所有している不動産を売却できるのか、この疑問にお答えします。

自己持分の売却は単独でできる

共有名義不動産を全体売却するには、共有者全員の同意が必要です。(民法第206条)

そのため、一人でも売却に賛同しない者がいると、売却ができません。しかし、自己持分のみに限れば、他の共有者の同意や承諾なく売却ができます。

共有持分の売却は単独で可能

不動産全体の売却に反対する共有者がいる場合は、自己持分の売却を検討してみると良いでしょう。

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共有持分の自己持分を売却する4つの方法

共有持分は、通常の不動産とは異なり、権利関係の把握や共有者との紛争など、慎重に対応しなければなりません。そのため、共有持分専門の業者に相談するのが一般的です。

共有持分を売却する方法には、大きく4つあります。

  • 買取業者に買取を依頼する
  • 仲介業者に仲介を依頼する
  • 他の共有者に売却する
  • 裁判所を通じて売却する

それぞれの特徴を解説します。

買取業者に買取を依頼する

その名の通り、業者に共有持分を買い取ってもらう方法です。提示された価格に売主が納得いけば、売買は成立します。売主と業者のやりとりで完結するので、時間や労力はあまりかかりません。
ただし、業者もその後転売などで利益を出すために買い取るわけですから、買取価格は低くなることが多いので注意が必要です。そのため業者の提示価格次第では契約が成立せず、いつまで経っても手放せない可能性があることは理解しておきましょう。

買取業者に買取を依頼する

仲介業者に仲介を依頼する

個人から個人への売却方法になりますが、自分に代わって業者に買い手を探してもらう方法です。業者が広告などを出して買い手を探してくれるため、自分で探す労力を減らせます。そして、売却が成功すると売却代金が売主に入り、業者には仲介手数料を支払います。

買い手は個人になるので、適切な相手が見つかるまで時間はかかってしまうかもしれません。しかし、売却価格は売主が決められるため、うまくいけば買取よりも高い売却金額になるケースが多いのです。

仲介業者に仲介を依頼する

共有者に売却する(全面的価格賠償)

自身の持分を、別の共有者に買い取ってもらう方法があります。これは別名「代償分割」とも呼ばれる方法です。不動産を単独で所有したいと考えている共有者と、不動産を手放して現金化したい共有者の両方がいる場合に、この方法は有効です。

ただし、成約価格を巡るトラブルが発生しやすい傾向にあります。適正な価格を決めるためには、不動産鑑定を受けることがおすすめです。不動産鑑定による結果は、客観的な証拠資料として公的に利用できますので、双方が納得しやすくなります。

裁判所を通じて売却する

共同売却は、不動産会社などを通じて第三者に物件を売却する方法です。この方法を用いるには、共有者全員の合意が必要です。

一方、形式的競売は裁判所を通じた売却方法です。この方法は、万が一売却に反対する共有者がいた場合でも、強制的に手続きを進めることができます。ただし、形式的競売を選んだ場合、売却額は一般の相場である共同売却時よりも低くなる傾向があります。

共有持分売却時の注意点

共有持分を売却する際は、以下の点に注意しなければなりません。

残りのローンがないか確認する

ローンを組む際に抵当権などの担保を設定していた場合には、売却時に残りの金額を一括で支払わなくてはいけない可能性があります。売却したのは良いものの、ローンの残金を一括で請求されてしまったといった事態になる可能性も否定できません。

こうしたことが起こらないようにするためにも、不動産に対してローンの支払いがまだ残っている場合は、今後どのようにするのか事前に銀行と相談しておくことが大切です。

売却した年の確定申告は必ず行う

共有持分の売却によって得られた代金は、譲渡所得に分類されます。そのため、確定申告で所得を申告する必要があることに注意しなければなりません。
申告漏れがあったり、確定申告をそもそもせずにいたりすると、後日税務署の調査が入り、延滞税や無申告加算税など追加で納税を求められるといったペナルティが発生することになります。

より多くの税金を払わなくてはいけなくなるので、売却したら忘れずに確定申告を行うことを覚えておきましょう。

共有持分は放棄できる?

ここまで共有持分の売却について解説してきました。しかし売却は買い手が見つからないと成立しません。

ところで、相続には財産を一切引き継がないことを選択する相続放棄という選択肢があります。相続のように、共有持分を放棄することはできるのでしょうか。

共有持分の放棄とは

そもそも共有持分の放棄とは、所有している共有持分の権利を手放すことを指します。結論から言うと、共有持分を放棄することは可能です。

具体的には、自身が持つ共有不動産の持分を放棄する場合、まず他の共有者に対して放棄の意思を伝える必要があります。意思表示がされることで、放棄された持分は自動的にほかの共有者のものとなります。

なお、ほかの共有者が複数いる場合には、その放棄された持分は、各共有者が持っている割合に応じて、他の共有者に帰属します。

共有持分の放棄とは

共有持分を放棄するために必要な手続き

共有持分を放棄するためには、まず所有権移転登記の削除手続きを行う必要があります。登記の削除によって、共有持分は放棄されます。ちなみに、共有持分の放棄に当たって、ほかの共有者から同意を得る必要はありません。自分の意思決定だけで進めることができます。

ただし、登記変更の手続きの場合は進める際には、他の共有者に関する書類が必要です。共有者の協力なしには進められないので、手続きが難航する可能性もあります。

参考記事:【2024年最新版】共有持分の放棄は早い者勝ちって本当!?

共有持分を放棄する際の注意点

前の見出しでは、共有持分を放棄することができることを解説しました。しかし、放棄を行う際にはいくつか注意しないといけないこともあります。最後共有持分を放棄する際の注意点を説明します。

共有者が登記を認めない場合について

所有権移転登記の協力を得られない場合の対処方法について説明いたします。もしどうしても所有権移転登記の協力を他の共有者から得られないときには、「不動産登記請求訴訟」を起こすという方法があります。

この訴訟が認められると、他の共有者の協力がなくても所有権移転登記を進めることが可能となります。とはいえ、この方法は民事裁判の一環であるため、訴訟の提出から判決が下るまでにはある程度の時間がかかることが多いです。

放棄した場合の税金について

共有持分を放棄した後の固定資産税の扱いについてお話しします。共有持分を放棄したとしても、場合によっては固定資産税が発生する可能性があります。

固定資産税は毎年1月1日時点で固定資産課税台帳に登録されている者に対して課税される仕組みです。ですので、放棄する意思を表明したにもかかわらず、まだ登記変更が行われていない場合や、登記変更手続きが1月1日以降になると、その年の固定資産税を負担しなければならないことがあります。

共有持分のお悩みなら当社へ

今回は共有持分について解説しました。

不動産を共有名義で所有することは、リスクが多く共有者同士のトラブルの火種になりかねません。早めに共有状態を解消するためには、共有名義不動産の専門家に助言を求めると良いでしょう。

共有持分の売却を検討している方は、ぜひ中央プロパティーにご相談ください。法律や権利関係に詳しい専門家が、みなさんの悩みを解決できるようにサポートいたします。

この記事の監修者

松原 昌洙マツバラ マサアキ

代表取締役 /
宅地建物取引士

CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。共有持分を始めとした相続トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。

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