【弁護士Q&A】未登記のままで共有者不明の土地の遺産分割協議書の書き方は?
【弁護士Q&A】未登記のままで共有者不明の土地の遺産分割協議書の書き方は?
相続後、未登記のままで共有者不明の土地の遺産分割協議書の書き方を教えてください。 約40年前に亡くなった親族の土地があります。 未登記のまま放置されていて、相続人が何人いるかも分からない共有状態となっています。 詳しい経緯は不明ですが、私の父親が固定資産税を支払っておりました。先日、父親が亡くなり、仕方なく私が税金を支払っております。 父親の相続人は、「母」(父にとっての妻)、「私」、「妹」、の3人です。 私には残すような資産もなく独身なので、私が亡くなったら、妹には相続放棄してもらい、妹に迷惑がかからないようにしたいと考えています。 共有持分が不明なのですが、私一人がその土地を相続するには、どのように遺産分割協議書を書けば良いでしょうか?
遺産分割協議は、共同相続人全員で行なうことが必要です。
仮に、この土地の全体についての遺産分割協議を行なおうとしたら、所有名義人(被相続人)の全ての相続人との間での遺産分割協議を行なうことになります。しかし、伺った事情からすると、相続人は相当な人数に及ぶと予想され、その全員と協議をするのは困難です。万が一、相続人の中に行方不明者がいれば、その相続人とは協議の実施自体が不可能です。
行方不明者については、裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て、選ばれた不在者財産管理人を当事者として遺産分割協議をする等の対応が必要となりますが、時間・費用のコストを考えると現実的ではありません。そこで、この土地に関しては、土地に対する父親の共有持分のみを対象として、父親の相続人間のみで、遺産分割協議書を作成するのが宜しいかと思います。
ご相談の内容からすると、ご相談者様は、まず、ご自身で共有持分全てを相続し、その後、自分が亡くなったときには、その時点で自身の唯一の相続人であろう妹様に相続放棄をしてほしい、とのお考えかと拝察いたします。最終的に相続放棄をするか否かは、あくまでその時点での妹様の意思次第になりますが、その前段階の、お父様の持分全てをご相談者様のものにする、というところまでの流れを説明したいと思います。
まず、戸籍を調査して、この土地の現在の共有者を確定し、かつ、各自の法定相続分に基づく持分割合を計算します。次に、ご相談者様において、各自が法定相続分通り相続するという内容の相続登記を申請します。法定相続分通りの相続登記は、共有不動産に関する保存行為として、相続人のうちの1名が単独で申請できます。各相続人の法定相続分に応じた相続登記が完了したら、お母様と妹様の持分についてご相談者様が移転登記を受けることで、お母様と妹様はこの土地の共有関係から離脱することになります。この持分の譲渡も、他の相続共有者の意向に関係なく単独で可能です。遺産分割協議書には、持分譲受の条件や、登記手続を誰が行うか、その費用を誰が負担するのか等も明記しておくのが良いでしょう。
まとめ
- 所有名義人以降の全ての相続人を特定して協議するのは困難です。
- 法定相続分通りの相続登記は、保存行為に当たり、相続人の1人が単独で申請できます。
- 相続した持分の譲渡も単独で可能です。
この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。