共有名義不動産を占有されていても明け渡し請求はできないって本当?|弁護士Q&A
共有名義不動産を占有されていても明け渡し請求はできないって本当?
目次
1.共有者に明け渡し請求はできない
結論から申し上げますと、共有者が共有名義の不動産を占有している場合、当然には明け渡し請求はできません。
1-1 明け渡し請求ができない理由
明け渡し請求とは、強制的に占有者を不動産から退去させる手続きのことです。
しかし、共有名義不動産の場合、以下の民法の通り、各共有者は不動産を使用するための権利を持っています。
民法第249条(共有物の使用)
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
つまり、少しでも持分を持っていれば、不動産を使用する権利が認められるのです。
1-2 共有者に明け渡し請求ができるケース
但し、明け渡しを求める正当な理由が認められる場合には、共有者に対し、明け渡し請求ができるケースもあります。
例えば、過去に明け渡し請求が認められた判例では、以下のようなケースがあります。
- 共有名義の土地に家を建てようとしている場合
- 共有者全員で決めた使用方法と異なる場合
- 共有持分権の濫用と認められる場合
① 共有名義の土地に家を建てようとしている場合
共有名義の土地に家を立てる行為は、共有物の変更行為に該当します。
共有物の変更行為には、他の共有者全員の同意が必要です。
必ずしも明け渡し請求を行う正当な理由として認められる訳ではありませんが、建物の建設に着手していない、または建物が完成していない場合は、工事の差止請求や原状回復請求が認められ、事実上、明け渡し請求が認められたことになります。
② 共有者全員で決めた使用方法と異なる場合
共有名義不動産全体の使用や変更は、共有者間での協議によって、合意された場合に認められます。
そのため、共有者のうち一人が協議内容とは異なる使用方法によって不動産全体を占有している場合、正当な理由として、明け渡し請求が認められるケースがあります。
同様に、共有者間での使用方法の協議を拒否して占有を続けている場合も、明け渡し請求が認められるケースがあります。
但し、明け渡し請求をする際は、請求する側が持分価格の過半数以上を有している必要があります。
③ 共有持分権の濫用と認められる場合
共有持分権の乱用とは、具体的には、共有者の生活用品を建物の外に出したり処分する行為、建物の鍵を勝手に変える行為などです。
このようなケースでは、過去に明け渡し請求が認められた判例があります。
2.共有名義不動産の占有によって起こりうるトラブル
占有に関するよくあるトラブル事例には以下のようなものがあります。
- 家賃の分配に関するトラブル
- 管理にかかる費用負担のトラブル
- 税金負担の分配に関するトラブル
2-1 家賃の分配に関するトラブル
共有名義不動産で、共有者のうち誰か一人が不動産を占拠している場合、占拠者は他の共有者に対し、持分割合に応じて家賃を支払う義務があります。
家賃の分配がないということは、他の共有者は自己持分の権利を活かせていない状態になります。
そのため、家賃の分配をめぐって共有者間でトラブルになるケースがあります。
2-2 管理にかかる費用負担のトラブル
共有名義不動産にかかる管理費用は、原則、持分割合に応じて共有者全員で負担する必要があります。(民法253条1項)
他の共有者が占拠している場合、当然ながら、「自分は不動産を使用していないのに、なぜ管理費用だけ負担しなければならないの?」と考えるでしょう。
2-3 税金負担の分配に関するトラブル
管理費用と同様に、共有名義不動産の固定資産税等の税金の負担も持分割合に応じて共有者全員で負担するため、「不動産は使用していないのに、税金だけ負担している」状況に憤りを感じる方も多いでしょう。
3.共有名義不動産のトラブルから抜け出すには?
共有名義不動産のトラブルから抜け出すのは、共有状態を解消するのが最も手っ取り早い方法です。
共有状態の解消方法については、今の記事で詳しく解説しています。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で共有物分割や遺留分侵害額請求など相続で発生しがちな不動産のトラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。