共有名義不動産の固定資産税は誰が払う?
共有名義不動産の固定資産税は誰が払う?
目次
共有名義の不動産でトラブルになりやすいのが、税金の支払いです。
共有名義不動産の場合、「固定資産税は誰が払うのか」「税額はいくらになるのか」など、あまり知られていないことがたくさんあるからです。
共有者間で納税について認識を揃えておかないと、払わない共有者が出たり、知らないうちに滞納したりといったトラブルが起こってしまいます。
そこでこの記事では、固定資産税の支払いについて税理士が分かりやすく解説します。
<この記事でわかること>
- 固定資産税は誰が払うのか
- 固定資産税の税額
- 固定資産税の納付方法
- 固定資産税の納付時期
1. 共有名義不動産の固定資産税は誰が払う?
共有名義不動産の固定資産税は誰が払うのか、結論を先に述べると共有者全員で負担することになります。
では、請求書は誰宛てに届き、負担しない共有者がいる場合はどうなるのでしょうか。
詳しく解説していきます。
1-1 固定資産税は共有者全員で負担する
固定資産税とは、固定資産(土地や建物)の所有者が市町村に納める税金のことです。
固定資産を相続して所有者となったら、共有名義であっても固定資産税を納めなければいけません。
共有名義不動産に関する費用は、持分割合に応じて負担するよう民法で定められています。(民法第253条第1項)
すなわち、固定資産税も持分割合に応じて負担義務があるということです。
しかし、共有名義不動産の固定資産税は連帯納付とも定められています。(地方税法第10条の2第1項)
連帯納付とは、連帯して固定資産税の全額を納めることです。
どういうことなのか具体例を見てみましょう。
共有者がAとBの2人、持分割合が1/2ずつだった場合、AとBはそれぞれ1/2ずつ固定資産税を負担しなければいけません。
しかしBが払わなかった場合、AはBの負担分も肩代わりして支払わなければいけないのです。
この逆も同じで、Aが払わなければBが肩代わりして、不動産全体の固定資産税を納める義務があります。
これが、連帯して納付する義務です。
たとえ持分が少しであったとしても、共有名義人として名前があるなら固定資産税の連帯納付者となるので注意しましょう。
1-2 納付書は代表者宛てに届く
共有名義不動産の固定資産税は、各共有者が個別に納めることはできません。
代表者宛に納付書が送付され、代表者がまとめて納めます。
ですから、まずは納付書を受け取る代表者を決めなければいけません。
相続により共有となった場合、市町村より法定相続人に「相続人代表者指定届」が送られてきます。
固定資産税に関する代表者を決め、相続人代表者指定届を市町村に返送すれば代表者を指定できます。
代表者はあくまで、固定資産税納付書の送付先です。代表者になったからといって代表者のみが納税義務を負うものではありません。
また、相続人代表者指定届を提出しなかったとしても罰則はありません。
ただし、届け出をしない場合は自治体側が代表者を指定し、納付書を送付します。
自治体による代表者の選考方法はそれぞれ異なりますが、一般的には被相続人との関係、持分割合の多さ、市町村に居住しているかなどの基準で決められています。
なかには代表者が誰になっているのか分からないというケースもあるかもしれません。
共有名義不動産の代表者は課税台帳に記載されています。都税事務所や市町村役場で確認しましょう。
代表者の変更も可能です。手続き方法は自治体により異なりますが、一般的には代表者変更届などを提出します。
1-3 共有名義不動産のよくあるトラブル
共有者間で固定資産税の支払いを巡ってトラブルになるケースがあります。
例えば、負担しない共有者がいる場合や代表者のみが支払っている場合、共有者が音信不通で連絡が取れない場合などです。
先述したように納付書は代表者に届きますが、納税義務は共有者全員にあります。
払わない共有者に代わり負担したのなら、その共有者に対して求償権を取得します。
求償権とは、立て替えたお金を回収できる権利です。
支払わない共有者に対し、内容証明郵便などによって立て替え分の請求を行い、返済に応じなければ訴訟により財産を差し押さえて回収します。
ただし、求償権を行使せず(請求などを行わず)に10年以上経過すると、時効により求償権が消滅するので注意しましょう。
2. 共有名義不動産の固定資産税はいくら?
ここからは、共有名義不動産の固定資産税の計算方法や納付方法、納付時期について解説していきます。
2-1 固定資産税の計算方法
まだ固定資産税通知書が届いていないというタイミングでも、固定資産税の金額を知りたいという方は多いかもしれません。
固定資産税の計算方法を解説していきましょう。
固定資産税の税額は、土地や家屋の資産価値に応じて算出されます。
自治体によって税率が異なる場合もありますが、基本的な計算方法は以下のとおりです。
固定資産税額=固定資産の評価額(課税標準額)×1.4%(標準税率)
固定資産の評価額(課税標準額)とは、「固定資産税評価額」とも呼ばれる、税額を計算する上で基準となる価格のことです。
では固定資産の評価額がどのように算出されるかというと、国が定めた固定資産評価基準にもとづいて、市町村が一つ一つの固定資産を評価して算出します。
固定資産の評価額は3年ごとに見直され、土地の地価が上がっていれば固定資産の評価額も上がり、固定資産税の税額も上がります。
固定資産税額を計算するには、まずは固定資産の評価額を調べなければいけません。
固定資産の評価額は納税通知書に添付されている課税明細書で確認できますが、手元になければ不動産を管轄する役所で固定資産課税台帳を閲覧し、確認しましょう。
固定資産の評価額を確認したら、次は土地と建物それぞれの固定資産税額を求めます。
先述した計算式を使い、土地と建物それぞれを以下のように計算します。
土地の固定資産税額=土地の固定資産の評価額(課税標準額)×1.4%(標準税率)
建物の固定資産税額=建物の固定資産の評価額(課税標準額)×1.4%(標準税率)
上記で求めた土地と建物それぞれの固定資産税額を合わせた額が、固定資産税の納税額です。
ただし固定資産税の減税制度があり、適用されると納税額は下がります。
住宅用として使われる土地に建てられた家の場合、土地にかかる固定資産税が軽減されます。
200平方メートル以下の部分については土地評価額の6分の1、200平方メートルを超える部分については土地評価額の3分の1となります。
例えば土地の広さが180平方メートルだったとしましょう。
土地の固定資産税評価額が2,500万円の場合、次のように計算します。
2,500万円×1.4%×1/6=58,000円(土地の固定資産税額)
2024年3月31日までに新築された住宅の場合、新築から一定期間は固定資産税が2分の1に軽減されます。
一定期間とは、一戸建ての場合は新築から3年間、マンションの場合は5年間です。
ただし、居住部分の床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下という条件も満たす必要があります。
例えば居住部分の床面積が100平方メートル、固定資産税評価額が1,500万円の建物の場合、次のように計算します。
1,500万円×1.4%×1/2=105,000円(建物の固定資産税額)
他に、耐震性や耐久性などが優れていると認定された「認定長期優良住宅」の場合も、一定期間は固定資産税の納税額が2分の1に軽減され、減税対象となる建て替えやリフォームを行った場合も翌年度の固定資産税の納税額が軽減されます。
2-2 固定資産税の納付方法
固定資産税の納付には、現金払い・口座振替・ペイジー・クレジットカードなど6つの方法がありますが、共有名義不動産の場合は領収書が発行される現金払いがおすすめです。
なぜなら、共有名義不動産の場合は代表者が一旦立て替え、他の共有者に後で請求するのが一般的だからです。
現金払いの場合、納付書を持って以下の方法で納付しましょう。
- 各市町村役場の窓口(東京23区は都税事務所)
- 金融機関または郵便局の窓口
- コンビニエンスストア
いずれの場合も手数料はかからず、その場で領収書を受け取れます。
コンビニエンスストアでの支払いは合計金額が30万円まで、バーコード付きの納付書のみという注意点がありますので気をつけましょう。
2-3 固定資産税の納付時期
固定資産税の納付は、年4回の分割方式が一般的です。
1年を4回の期に分け、それぞれの納付期限内に支払います。
納付書が届くタイミングや一般的な納付スケジュールは以下のようになります。
4月~6月:納税通知書と振込用紙が郵送で到着
6月:第一期分の納付
9月:第二期分の納付
12月:第三期分の納付
翌年2月:第四期分の納付
ただし、自治体によって納付期限が若干異なる場合もあるので注意しましょう。
また、4回に分割せず一括納付も可能です。
一括納付の場合、納付期限は分割納付の第一期分と同じです。
3. 固定資産税を滞納するとどうなる?
共有名義不動産の固定資産税は共有者全員に支払い義務があるため、代表者が支払わなければ市町村は他の共有者に請求します。
固定資産税を滞納するとどのようなリスクがあるかも含め、流れを把握しておきましょう。
3-1 督促状が届く
固定資産税を滞納すると、督促状が届きます。
法律では「納期限から20日以内に督促状を発しなければならない」とされており、「督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは財産を差し押さえなければならない」と定められています。(地方税法第329条、地方税法第331条)
共有名義不動産の場合、代表者だけでなく他の共有者の財産も差し押さえ対象なので注意しなければいけません。
ただし、不注意で期日を過ぎている場合や、納税できない事情を抱えている場合もあります。
これらを考慮し、差し押さえの前に納税の催告(文書や電話、訪問などで)が行われます。
それでも滞納を続けると税務調査が行われ、その結果、課税対象である不動産が差し押さえられます。
3-2 延滞金が発生する
固定資産税滞納のリスクは差し押さえだけではありません。
納期限の次の日から延滞金が発生します。
支払い額は滞納した日数によって増えていき、納期限から1ヶ月を過ぎたタイミングで延滞金の割合が高くなるため、早めの対応が大切です。
4.共有名義不動産の固定資産税を負担したくない場合
ここまで共有名義不動産の固定資産税について解説してきましたが、「活用しているわけでもない不動産の固定資産税を払いたくない」という悩みも多いものです。
このような場合の解決策を紹介します。
4-1 共有持分を第三者に売却する
固定資産税を負担したくない場合、共有持分を第三者に売却する方法があります。
共有名義不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要ですが、自己持分のみであれば他の共有者の同意なく売却できます。(民法第206条)
ただし、共有持分は一般的な不動産と比較して購入希望者が少ない現状があります。
一般の個人が共有持分のみを購入しても不動産の活用に制限があり、他共有者とのトラブルが起こるリスクもあるからです。
共有持分のみをスムーズに売却するには、共有持分専門の不動産会社への依頼がおすすめです。
4-2 共有持分を共有者間で売買する
共有者間で合意できる場合は、共有者間での持分売買がおすすめです。
他の共有者に、自己持分を買い取ってもらいましょう。
買い取る側は持分が増えるのでメリットがあります。
特に、2人で共有していた場合は買い取ることで共有状態が解消され、単独名義の不動産として自由に活用できるでしょう。
まとめ
共有名義不動産の場合、固定資産税納付書は代表者宛てに届きますが、固定資産税は共有者全員で負担しなければいけません。
共有者間での意思疎通や支払いに問題がなければ良いですが、固定資産税を払わない共有者がいるなどのトラブルもあります。
トラブルを避けたい、固定資産税を負担したくないという場合は、共有持分専門の不動産会社に依頼し、自己持分を売却しましょう。
中央プロパティーでは、共有者間のトラブル解消から持分の売却まで、一気通貫で専門的なサポートが可能です。弁護士とも連携しているため、法的根拠を持って安心感のある対応ができます。
以下のようなお悩みを抱えている方は、一度ご相談ください。
- 共有持分を売却したい
- ほかの共有者とトラブルになっている
- 空き家の共有不動産を持っている
- どんなサポートが受けられるか聞いてみたい
- トラブル解決のアドバイスが欲しい
この記事の監修者
税理士
税理士。東京税理士会品川支部所属。日本税務会計学会訴訟部門所属。福島健太税理士事務所代表。不動産デベロッパーから税理士に転身した経歴をもつ不動産と税のスペシャリスト。共有持分で不動産を相続される方が相続税を相談する税理士として多くの顧客を得る。趣味は釣り。