\ 無料相談・査定をする /

【弁護士Q&A】相続不動産の贈与税について相談です基礎知識

作成日:

【弁護士Q&A】相続不動産の贈与税について相談です

半年前、遺言書を残して夫が亡くなりました。
遺言書の項目の中には「マンションは長男へ」と記載されていました。妻の私とは離婚裁判中だったので、相続人を長男にしたのだと思います。ローンは完済済みです。
長男は既に社会人として独立しており、マンションのローンの半分は私の個人資産から出していること、実際に住んでいるのは私であることもあり、私のものにして良いと言ってくれています。しかし、そうなると、法的な手続きはまず長男が相続し、さらに私へ贈与する形になり、高額な贈与税が発生すると聞きました。
贈与税のことを考えると、そのようなことはしない方が得策なのでしょうか?

まず、ご主人が、離婚協議中に亡くなった=正式に離婚が成立する前に亡くなったとのことであれば、ご相談者様もまた、ご主人の配偶者として、ご主人の相続人の地位にあることになります。

今回のご主人の遺言は、長男という特定の相続人にマンションという特定の不動産を相続させる旨の特定財産承継遺言に該当するところ、もし、長男が、相続放棄をした場合は、マンションは他の相続人の遺産分割の対象になる(長男以外の相続人がご相談者様のみであれば、ご相談者様が単独で相続する)ことになります。但し、ご主人が亡くなったのは半年前とのことですので、ご主人が亡くなった事実を長男が知ってから既に3か月が経過している場合は、今から長男が相続放棄を行なうことは出来ません。

次に、長男が相続していることを前提に、ご主人の遺言書の内容とは異なり、ご相談者様がマンションを相続するという内容の遺産分割協議を別途行なうことが出来るかという問題があります。この点は、実務上も見解が分かれており、相続登記が未了の状態で相続人全員の合意があれば特定財産承継遺言と異なる相続登記をすることも可能であるとする見解もあるところ、最高裁判例は、特定財産承継遺言は、特段の事情がない限り、相続発生と同時に直ちに当該相続人に承継されるため、遺産分割協議の余地がない(相続するなら遺言通りに財産を承継すること拒めない)という立場を取っています(最高裁平成3年4月19日判決)。

この判例の見解を前提にするならば、既にマンションは長男が相続で取得したことで確定しているので、ここからご相談者様がマンションを取得するには、長男から譲渡を受ける必要があります。もし長男から無償で譲り受けた場合は、取得したご相談者様には高額な贈与税がかかることになります(他に不動産取得税もかかります)。有償の売買として譲り受けた場合も、対価が低廉な場合は、贈与とみなされる恐れがあります。マンションを長男から譲り受けるのであれば、みなし贈与とみなされない適正価格で購入することが最も安全です。

まとめ

  • 特定財産承継遺言については、全ての相続人の同意があっても、当該財産について遺言と異なる内容の遺産分割は出来ないとするのが最高裁判例の立場です。
  • 無償で贈与を受けた場合や、贈与とみなされるような低廉な価格で買い受けた場合は、高額な贈与税がかかることになりますので、取得するのであれば適正価格での売買が望ましいです。

この記事の監修者

都丸 翔五トマル ショウゴ

社内弁護士

当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。

この記事のタグ

おすすめの記事はこちら