共有名義の農地は、売却できる?
共有名義の農地は、売却できる?
ご相談内容
福岡県にある土地について相談です。
3年前に母が亡くなり、兄弟で実家を相続しました。古い建物であったため取り壊し、現在は更地のまま放置しています。兄とは、仲が悪く共有状態を解消したいので、私の共有持分だけを売却したいと考えています。
登記簿を確認したところ、地目が「田」になっていました。このままの状態でも売却は可能でしょうか?
ご相談のポイント
- 民法のルールと農地法の規制
- 現在の地目のまま売買できるか
- 土地の地目変更手続
①民法のルールと農地法の規制
民法上、土地が共有名義の場合、土地全体での売却には全共有者の同意が必要ですが(民法251条1項)、土地の共有持分の売却については他の共有者の同意は不要です。
但し、対象となる土地の地目が「田」である場合は、当事者間での自由な売買が農地法で規制されています。
②現在の地目のまま売買できるか
農地法上、農地(田や畑)の所有権を移転するためには、原則として農業委員会の許可を受けなければならないとされています(農地法3条)。
したがって、現在の「田」の地目のまま土地の共有持分を売買する場合には、農業委員会の許可が必要になります。
しかし、この許可は、譲受人が土地を実際に農地として利用することを前提に出されるものですので、宅地としての売買は許可されません。
なお、ご相談者様のように、相続を原因として「田」の所有権が移転した場合は、農業委員会の許可は不要です。
③土地の地目変更手続
本来、農地か否かは、土地の現況をもとに判断されるのが原則であるところ、今回のご相談の共有地は、登記簿上の地目=「田」と、土地の現況=「宅地」が一致していない状態です。
このような場合は、共有持分の売買に先立ち、土地の地目変更の手続を行なうことが必要です。
具体的には、農業委員会から非農地証明書等の交付を受けた上で、法務局に地目変更登記を申請することになります。
土地の地目が「田」から「宅地」に変更された後の売買であれば、農地法の規制はかかりません。
まとめ
民法上は、土地の共有持分の売買は他の共有者の同意なく行なえますが、売買の対象となる土地の地目が「田」である場合は、農地法による規制が別途かかります。
「田」の地目のままだと、土地の売買に農業委員会の許可が必要になりますが、宅地としての売買は許可されません。
登記簿上の地目は「田」だが、実際の土地の現況は「宅地」であるという場合は、土地の地目変更の手続を行なえば、農地法の規制がかからない形で、土地の共有持分の売買を行なうことが可能になります。
この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。