共有名義アパートの家賃を取り戻したい
共有名義アパートの家賃を取り戻したい
ご相談内容
母の持っていた奈良市のアパートを兄妹4人で相続。
8年前に母が亡くなってアパートの家賃収入を四人で均等に分けることで全員合意し、一番近くに住んでいる姉(長女)が集金・管理することになりました。次男で山口県に住む私も共有持分4分の1を所有しています。
しかし今日まで長女から、アパートの家賃が振り込まれたことはなく、7年以上も取り分を貰っていません。家賃の行方はどこへやら。姉に家賃の配分を聞いても“お前は知らなくていい”の一点張りでお手上げ状態です。
未分配の家賃を取り戻す方法があれば、教えてください。
ご相談のポイント
- 賃料を独占する共有者に対しては不当利得返還請求が可能
- 相手共有者との直接の紛争を回避したい場合
①賃料を独占する共有者に対しては不当利得返還請求が可能
不動産が共有の場合、各共有者は、自己の持分割合に応じた使用・収益の権利を有しています。
したがって、共有不動産が収益物件で、そこから賃料収入が生じている場合に、賃料収入を独占している共有者がいるときは、他の共有者は、独占する共有者に対して、不当利得返還請求権に基づき、自身の持分割合に応じた賃料収入を引き渡すよう求めることが出来ます。
②相手共有者との直接の紛争を回避したい場合
もっとも、法律上の請求権があるとはいえ、現実に賃料収入を回収するには、共有者間との協議や、協議が纏まらない場合には、共有者を相手に裁判手続を取る必要が生じます。
しかし、本件のように、相手共有者と親族関係にある場合、相手共有者と正面から争って、個人的な関係を悪化させたくないと考える方も多いでしょう。
そのような場合は、共有持分を第三者に売却して、共有関係から離脱するということが、選択肢として考えられます。
また、未回収賃料の不当利得返還請求権を、共有持分と併せて売却する(債権譲渡する)という選択肢もあります。
この場合、受け取れる金額は、不当利得返還請求権の額面から割り引かれるものの、債権譲渡をすれば、自身が当事者となって相手共有者との間で協議・裁判を行なう負担から解放されるメリットがあります。
まとめ
共有不動産の賃料収入を独占する共有者に対しては、不当利得返還請求が可能です。
相手共有者が親族である等の事情から、相手共有者との直接の紛争を回避したい場合には、共有持分の第三者への売却や、不当利得返還請求権の第三者への債権譲渡により、共有関係・債権債務関係から離脱することが有効な選択肢です。
この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。