松原昌洙が【あぶない!! 共有名義不動産】の第2章を解説
【松原昌洙が解説】「とりあえず共有名義」の大きすぎるリスクとは
全国各地で後を絶たない不動産トラブル。その中でも発生が多く解決が難しいのが「共有名義不動産」をめぐるトラブルです。
書籍『あぶない!! 共有名義不動産』は、不動産トラブル解決のスペシャリストが執筆した一冊。前の記事でご紹介した「トラブルはなぜ起こるのか」といった基礎的なポイントから具体策まで解説しています。
このページでは、本書で取り上げた「共有名義不動産に関するトラブルの事例」について解説していきます。
「相続によって発生するトラブル」「収益不動産を巡るトラブル」「夫婦共有名義のトラブル」「底地権や借地権の場合のトラブル」、この4つの状況別にまとめていますので、ぜひご参考にしてください。
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ー他人事ではない。不動産による相続トラブル
家族や親族の不動産を相続するというケースはよくあります。中でも、亡くなった親の住んでいた家を子どもたちが共有名義で相続することは多く、結果的にトラブルになるということは多いです。
具体的なトラブルとして、本書では次の事例を取り上げています。
- 共同で相続した空き家の売り値をめぐって揉め事に
- 共有名義不動産に住んでいる共有者の兄が家賃を支払ってくれない
- 共有者ではない叔父が勝手に共有名義不動産に住んでいる
- 姉が持分比率以上の権利を要求してきた
- 共有名義不動産を弟たちが勝手に売りに出した
- 土地の持分と区分所有権を兄に売りたい
- 共有者の弟が実家の売却に突然反対した
親族間であっても、ものの考え方や人への思いは異なります。不動産を共有することで、考え・思いの違いがあわらになり、トラブルへと発展していきます。
ー収益不動産の共同経営は、想像以上に難しい…
収益不動産とは、所有者が不動産を他人に貸して賃料収入を得られる駐車場、アパート、マンション、収益ビルなどのことです。これらの不動産が相続されることでトラブルになるケースもよくあります。
収益不動産は、他人に貸し出すことで資産運用の手段として活用できるものですので、不動産の管理の仕方や賃料の配分をめぐって、相続人である共有者の意見が対立しやすいです。
本書では次の事例を紹介しています。
- 兄が貸しているアパートの家賃を分配してくれない
- 姉が家賃を負担せずに共有名義のアパートに住んでいる
- 建て替えても持分を贈与しても負担の大きい古アパート
- 海外にいる共有者が老朽化したビルに悩まされる
- 10戸のマンションが姉との相続トラブルの火種に
- 共有者の叔父が土地の持分だけを買い取ろうとする
- 収益ビルの持分の売却を法人から求められた
収益不動産につきまとうのは、利益・不利益の問題です。共有名義で所有している不動産の恩恵を十分に受けられていない、あるいは、他の共有者が自由に使ってしまっているという不満が生まれやすい特徴があります。老朽化に伴う管理負担の問題、売却の是非など、複雑な要因も絡んできます。
ー共有名義不動産が離婚時の厄介者になる
夫婦共有名義のトラブルが生じるのは、両者の関係が悪化し離婚という局面を迎えるときです。
離婚を考えるとなると、当然、共有する不動産をどうするか判断しなくてはいけません。考えが一致し、お互い納得した方法で処分できることが理想的ですが、それぞれが抱える事情が妨げとなって同意が取れないことがあります。結果的にトラブルに発展してしまうケースがあるのです。
本書では夫婦共有名義のトラブルの事例を、離婚前・離婚度に分けて紹介しています。
- 【離婚前】夫婦の共有名義不動産、離婚できずローンも払い続けている
- 【離婚後】連絡が取れなくなった元夫との共有名義不動産
いずれも、夫婦としての関係が悪化している、完全に破綻しているにも関わらず、共有名義不動産があることで金銭的な関係を断ち切れず負担を強いられるというケースです。
共有名義を選択するときには、「もしかするとトラブルになるかも」と考える人は少ないものです。共有名義不動産にすると費用削減などのメリットがあるため安易に選択してしまい、「こんなはずではなかった」と後悔するケースは多いのです。
ー実家が借地の人、要注意です
特殊なケースとして「底地権や借地権の場合のトラブル」も起こり得ます。
底地権とは他人に土地を貸して地代を得る権利のことで、借地権とは建物を建てる目的で地主から土地を借りて地代を払う側の権利のことです。
本書では次の事例を紹介しています。
- 地代の低い底地権の共有不動産をめぐり兄弟の意見が食い違う
- 借地権付き建物の持分を貸主の承諾なしに売却したい
- 借地権を共有する法人から持分を買い取りたいと言われた
底地権や借地権も、他の所有権と同様に売却などの取引の対象になります。権利が相続されることもあるので、相続後のトラブルに発展することがあります。買い取りを希望する第三者の介入によって、判断が難しくなることも多いです。
ここまで説明した通り、共有名義不動産には様々なトラブルの火種が潜んでいます。トラブルの内容も複雑化しやすく、なかなか自分では解決できないということがほとんどです。
結果的に、不動産を売ることも、新たに買い取ることもできず塩漬け状態になってしまいます。
次の記事では、今回ご紹介したようなトラブルの解決法をご紹介していきます。様々な種類に分けて解説しますので、ぜひご参考にしてください。
この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。共有持分を始めとした相続トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。