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【松原昌洙が解説】なぜ今相続トラブルが増えているのか。基礎知識

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【松原昌洙が解説】なぜ今相続トラブルが増えているのか。

仲の良かった兄弟姉妹が遺産相続をきっかけに関係を悪くしてしまうことは珍しくありません。特に、相続財産に不動産が含まれる場合はトラブルが起きやすい傾向があります。

相続不動産のスペシャリストが執筆した本書をもとに、時代の変化と相続トラブルの関係、不動産の価値の変化と発生しやすくなっているトラブル、これらを未然に防ぐ準備について解説します。

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個の尊重と権利が主張できる時代

前提として、家族の数だけ相続は発生し、相続の数だけトラブルがあると考えるべきです。日本では、およそ年間130万人以上の方が亡くなり、身寄りのない方を除いたほとんどの家族・親族が相続に直面しています。相続人が複数いる場合、相続トラブルは必ずといっていいほど発生しており、家庭裁判所への申し立て件数こそ少ないですが円満に完了するケースはほとんどありません。

相続トラブルの根底には「身内同士の感情のもつれ」があります。相続財産を分け合おうとすると、どうしても「不平等だ」という気持ちを抱える人が出てきてしまうからです。

これら、身内同士のもつれを生む原因として、時代とともに親族・個のあり方が変化してきたことがあります。

ドラマや映画などで「家督を譲る」や「長男に継がせる」といった言葉を耳にしたことはないでしょうか。昭和22年までの旧民法では長男が全ての遺産を相続することが原則と定められていたのです。

新民法からは、遺産は相続人全員で分け合う制度になりましたが、それまでの人の意識は簡単に変わりません。長男に家を継がせる家中心の考え方は色濃く残っていました。

しかし、21世紀に入ってからはこのような意識の変化がはっきりしてきます。

情報化の波が後押しし、個の尊重と権利意識が高まったのです。これは相続の考え方へも影響していきます。

それまでの家の意識が薄れ、核家族が増加、結婚して独立し、親に会うのは孫の顔を見せるときくらい、兄弟姉妹との交流も少なくなっていきます。実家での親族の集まりも減っていきます。実家がつなぐ家族・親族の役割が変化したのです。

そうなると、親族間の身内意識よりも、自分や自分の家族の権利を守りたいという意識が強くなります。つまり、個人を尊重し、権利を主張できる時代になっていったのです。

近年はインターネットの普及もあり、個人でも権利を主張するための知識を得やすくなりました。もともと相続とは、家訓や家の歴史を含めて行う意味合いが強かったのですが、今や財産の継承だけに関心が向くことが多く、新しいトラブルも起きやすくなっています。

不動産は迷惑な遺産になり兼ねない

今や「不動産は負動産」と揶揄されるほど、迷惑な遺産となり兼ねないものになりました。

いわゆるバブル経済崩壊前の1980年代までは、土地は時間が経つだけで値上がりする打ち出の小槌、現金を相続するよりありがたいものでした。近年は都市圏などの一部を除いて地価は上がらないのが実情です。

もちろん、相続人の住居にするのであれば利用価値はありますが、人口減少や人口の都市集中、地方過疎化も影響し、空き家になりやすい状況があります。

よくあるケースとして、子は大人になって都会に働きに出てしまい、田舎の両親が年を取って実家相続の時期を迎えても、子は遠方の実家に関心が薄れているということがあります。住居として利用できませんし、売値もつきません。相続したとしても固定資産税の支払いが重荷になるだけの、迷惑な遺産となってしまうのです。

こういった理由もあり、空き家を放置するケースも増えています。今では全国の所有者不明の土地の総面積は九州の面積を超えるまでになっています。

不動産は、相続を決断したとしても厄介なケースになることもあります。共有名義や借地権が絡みトラブルとなるケースです。

共有名義のトラブルの主な例に次のようなものがあります。

  • 相続人の誰かが住む場合、名義は共有名義のままにするのか
  • 居住者以外の共有者に対しては居住者から金銭などの支払いをするのか
  • 居住者が他の共有者から持分を買い取る場合、いくらで買い取るか
  • 相続人が誰も住まずに売却する場合、いつ、いくらで売却するのか
  • 相続人全員の意見がまとまらない場合どうするのか

借地権付き建物の場合、相続人同士のトラブルに加えて地主とのトラブルのリスクも生じます。借地権をめぐるトラブルに多くみられるのは次のようなことです。

  • 地主から土地の返還を要求される
  • 地主が借地権の売却を承諾してくれない
  • 地主が建物の建て替えを承諾してくれない
  • 地主から借地権の名義変更料を要求される
  • 地主が借地権の買い取りに応じてくれない

仲の良い家族こそ相続対策をしていない実情

ここまで、主に身内同士のトラブルについて解説してきましたが「うちは仲が良いから大丈夫」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

また、相続のトラブルというと「資産家に起こること」「うちには関係のないこと」と想像される方もいらっしゃいます。

実は、家庭裁判所で争うのはもともと仲の良かった兄弟姉妹が多いのです。「仲が良いから」と遺産の分け方や管理・処分方法について話し合いをしなかった結果、いざ相続が発生すると揉めてしまいます。

加えて、財産が少ないケースでトラブルは頻出しているのです。相続は財産の多寡に関係なく、身内同士の感情のぶつかり合いを生む可能性が高いのです。

トラブルを生まないためには、今は仲が良い家族であっても「備えあれば憂いなし」の心がけで、準備をきちんとしておくことが重要です。

準備の基本は、よく話し合って納得を得ておくこと、遺言書を残しておくこと・もらうことです。仲が良いときこそ、相続の話や遺言書の依頼など言い出しにくいことも進めやすいでしょう。

望んで家族と揉め事を起こしたい人はいないはずです。想い出がきれいなうちに準備をしておくことをおすすめします。

次の記事では、共有名義不動産を正しく理解することでトラブルを防ぐ方法を解説します。ぜひご参考にしてください。

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この記事の監修者

松原 昌洙マツバラ マサアキ

代表取締役 /
宅地建物取引士

CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。共有持分を始めとした相続トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。

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