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【松原昌洙が解説】共有名義不動産を正しく理解すれば、トラブルは防げる。基礎知識

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【松原昌洙が解説】共有名義不動産を正しく理解すれば、トラブルは防げる。

仲の良かった兄弟姉妹が遺産相続をきっかけに関係を悪くしてしまうことは珍しくありません。特に、相続財産に不動産が含まれる場合はトラブルが起きやすい傾向があります。

相続不動産のスペシャリストが執筆した本書をもとに、共有名義不動産の基本ルール、実家相続が揉める理由、共有名義を抜け出す方法、相続トラブルを避けるための対策について解説します。

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共有名義不動産の基本ルール

まずは共有名義不動産の基本を押さえましょう。

共有名義不動産のわかりづらいところは、「土地面積に対する権利ではない」ということです。

例えば、1つの不動産を3人で共有名義にする場合、1人が不動産を持分として3分の1の権利を持つという意味であって、土地の面積の3分の1を所有できるわけではないのです。評価額3,000万円で全体売却できたときに1,000万円が分配され、ようやく明確な価値となります。

また、権利を持っている間は、持分に見合った利益を得ているかわかりづらいという性質もあります。こうした複雑さがトラブルを生みやすくしています。

共有名義不動産の基本として、3つの制限ルールがあります。共有者の同意の必要性に応じた次の3段階の制限ルールのことです。

  • 「単独」でできること:草むしり、雨漏りやトイレの修繕など。保存・維持行為であることが前提。
  • 「過半数の同意」でできること:部分的なリフォーム、短期間の賃貸借など。
  • 「全員の同意」でできること:大規模なリフォーム、建て替え、売却など。

この制限ルールの中では単独でできることは限られています。何を、どの期間、どのようにするか、ケースバイケースで同意の必要性が異なってきます。

中でも「売却」は、不動産の法律上の変更とみなされる重要な選択であるため、全員の同意が必須となります。

ただ、自分の持分だけ売却する場合は他の共有者の同意は不要です。

実家の相続は、なぜ揉めるのか

なぜ実家の相続は揉めるのか、特に多いトラブルをいくつか解説します。

1つ目は、親の死後、実家に住んでいる相続人と他の相続人が対立するケースです。相続人同士で、利益の不均衡が生じ、主張の食い違いが発生することがよくあります。相続時点では問題なかったとしても、時間や環境の変化とともに不満が表面化してくる可能性があります。特に、実家に住んでいる・住んでいないといった条件の違いはアンバランスな利益享受につながりやすいので、対立しやすくなります。

2つ目は、実家の売却を巡る食い違いです。実家を売却する場合、全員が合意して第三者に売るケースと、相続人の一人が他の相続人から買い取るケースがあります。相続した実家が空き家になる場合は第三者への売却、誰かが住む場合は住むことになる相続人が買い取るのが合理的な処置の仕方です。第三者への売却は簡単なように見えますが、意外とすんなりいきません。売ること自体に合意はしても、条件の詳細で意見が食い違う事が多いのです。例えば、次のようなことがあります。

  • 売却時期で食い違う
  • 売却価格で食い違う
  • 売却金の分配で食い違う
  • 途中で売却撤回に気が変わる

3つ目は、リフォームを巡る闘いです。例えば、「実家に住んでいる長男が同意なしに勝手にリフォームした」ことからトラブルに発展するケースです。共有名義であっても、実家に住んでいる長男は「自分の家だ」という意識が強く、過半数の同意のことなど頭にないままリフォームを進めてしまうことがあります。他の共有者も見過ごしてしまうことがあり、表面化しにくいのですが、過半数同意を得ないことがトラブルの種になることには変わりません。

本書では事例もご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

共有名義を抜け出す方法とは

複雑かつ、リスクの高い共有名義不動産、「どうにか抜け出したい」と考える方も多いでしょう。具体策として、次のようなものがあります。

  • 自己持分を売る
  • 相続人全員から持分を買い取る
  • 放棄
  • 共有物分割請求訴訟

それぞれ解説していきます。

まずは「自己持分を売る」方法、他の共有者または第三者に持分を売る方法です。後ほど解説する「放棄」の場合は、無償で持分を与えるだけになりますが、「売却」であれば利益も確保した上で、共有名義から抜け出すことができます。「単独名義でない不動産の権利に買い手がつくのだろうか?」と心配になるかたもいらっしゃるでしょう。確かに、不動産全体を売ったりできるわけではないので使い勝手が悪いように思えますが、実は買い手はたくさんいます。投資家や専門の買取業者が、投資に見合う利益が得られると判断した場合に積極的に買ってくれます。また、そういった買い手はあくまで投資目線で判断しますので、全国どこにあろうが関係なく、ハイリスク・ハイリターンを狙って相場より安ければ買う傾向にあります。

「相続人全員から持分を買い取る」方法も考えていきましょう。これは、相続人の誰かが実家に住んでいた場合に採ることができる共有名義解消方法です。実家を売却するには共有者全員の同意が必要ですが、個別の持分の売却は共有者単独で行うことができます。実家に共有者の一人が住むなら売却の必要は当面ありませんが、共有名義を解消し単独名義にしておくことでトラブルを防ぐことができます。

財産をあきらめてもいいなら「相続放棄」か「持分放棄」という選択肢もあります。とにかく揉め事から手を引きたいと考える場合の手段です。「相続放棄」の場合、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に手続きが必要です。また、不動産以外の相続財産もすべて放棄しなくてはいけません。「持分放棄」には期限がなく、他の共有者の同意なしで行うことができます。ただ、他の共有者と共同で登記手続きが必要になる、贈与税の対象になるといったことがあります。「持分放棄」は金銭的な利益がないため、特殊な場合を除き、共有名義解消の手段としてはほとんど利用されていません。

共有名義を解消する手段として「共有物の分割」があります。これは「共有物分割請求訴訟」に発展します。各共有者への共有不動産の分け方(分割方法)は3つです。

  • 現物分割:不動産そのものを持分に応じて分けるやり方です。
  • 代金分割:不動産全体を売却し、売却したお金を共有者で分配する方法です。
  • 代償分割:共有者の一人が他の共有者の持分を買い取って名義を一本化する方法です。

共有名義の解消にどうしても応じない共有者がいる場合、最後の切り札として「共有物

分割請求訴訟」があります。裁判所に分割方法を決めてもらう申し立てです。共有物分割請求訴訟で和解することもありますが、多くの場合競売になり、落札価格は通常の市況価格より安くなってしまいます。

さらに、裁判は手続きの手間や費用もかかり、判決までに1年や2年かかることも珍しくありません。たとえ決着しても親族間の心のトラブルまでは解決してくれません。また、「共有物不分割登記」がされている場合は、共有物分割請求訴訟はできません。

事例に基づくトラブル解決方法は、本書で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

相続トラブルを避けるための対策はあるのか

相続トラブルを避けるためには、事前の対策がなにより重要です。理想的なのは、親の意思と子の要望をあらかじめ話し合い決めておくことです。

また、次のようなポイントを押さえることをおすすめします。

  • 遺言書を必ず残しておく:口約束と違い、法的な強制力を持つのでトラブル回避につながります。
  • 認知症になった場合の対策をとっておく:例えば、家族信託の制度を利用するなど、老化とともに判断能力が鈍った際の対策を考えておくべきです。
  • 共有名義の扱いを文書で残しておく:遺言書があってもトラブルが起こるリスクはあります。どの時点でどういった話し合いをしたのか、文書に残しておくことが重要です。

次の記事では、トラブルを複雑化させる厄介な借地権相続について解説します。ぜひご参考にしてください。

この記事の監修者

松原 昌洙マツバラ マサアキ

代表取締役 /
宅地建物取引士

CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。共有持分を始めとした相続トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。

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