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【松原昌洙が解説】相続法の改正から考える家族の在り方基礎知識

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【松原昌洙が解説】相続法の改正から考える家族の在り方

仲の良かった兄弟姉妹が遺産相続をきっかけに関係を悪くしてしまうことは珍しくありません。特に、相続財産に不動産が含まれる場合はトラブルが起きやすい傾向があります。

相続不動産のスペシャリストが執筆した本書をもとに、相続法が改正された背景、日本で普及しない遺言書の文化、事実婚で配偶者居住権は認められるのかどうかについて解説します。

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相続法が改正された背景とは

2019年に、40年ぶりの「相続法」改正があったことをご存知でしょうか? 相続は、多くの方に関わる問題でありながら「何が変わったのかわからない」という方も多い問題です。

まずは、日本で相続をめぐる問題にどのような変化があったのか、その背景にあるものは何か解説します。

近年の日本での相続をめぐる問題と、切って離せないのが「高齢化社会」です。相続開始時点の相続人(特に配偶者)の年齢は、以前より高齢化しています。親や配偶者の介護の問題も相まって、複雑化するケースが増えています。

家族のあり方も大きく変化しています。いわゆる大家族から核家族へ、家族の意識が時代とともに変化しました。親族での集まりなどが減り、自分の家族の利益が強く意識されるようになったことから、相続トラブルが起きやすくなっています。

離婚や再婚への抵抗が以前より薄れたことも、相続の問題に影響を及ぼします。家族が離れる、新たに家族となる、その機会が増加しているのです。その家庭にいる子が複雑な形で相続権の問題に巻き込まれることもあります。

このように、様々な時代の変化と相まって相続が複雑化し、法改正に至ったという背景があります。それまでの法定相続分に従った遺産配分では、実質的な公平性を図ることが難しい場合が増えたため、相続関係者の権利を時代に合わせて明確化するために40年ぶりに相続法が改正されました。

主な改定項目は、以下の通りです。

  1. 配偶者居住権
  2. 夫婦間の居住用不動産の贈与
  3. 預貯金の払戻し
  4. 自筆証書遺言の緩和
  5. 自筆証書遺言の保管制度
  6. 遺留分制度の見直し
  7. 特別寄与
  8. 遺言と登記の優先性

各項目の改定内容については、本書で詳しく解説しています。

日本で普及しない、遺言書の文化

アメリカでは約50%、イギリスでは約80%の人が、遺言書を作成している一方、日本での遺言書作成割合は、約10%と他国と比較しても非常に少ないです。

なぜ、遺言書は日本で普及しないのでしょうか。

前提として、遺言書には主に3つの種類があります。

  1. 自筆証書遺言
  2. 公正証書遺言
  3. 秘密証書遺言

各遺言書のメリット・デメリットについては、本書で詳しく解説しているため、ここでは割愛しますが、2020年の法改正によって自筆証書遺言の普及が期待できるようになりました。

具体的には、改正前はすべて手書きで作成しなければならなかったのが、財産目録についてはパソコンなどでの作成も認められるようになった、自筆証書遺言を法務局で保管する制度が新設されたなどがあります。

なお、2023年10月には財産目録だけでなく、遺言書自体をデジタル機器で作成できるように検討を進めていると法務省より発表がありました。

遺言者の死亡後に相続人などが遺言保管所(法務局)で遺言書が保管されているかどうかを調べて遺言書保管事実証明書を交付してもらったり、遺言書の写しの交付を請求(遺言書情報証明書)したりできます。遺言書の閲覧も可能です。遺言書の閲覧や遺言書保管事実証明書などの交付がされると他の相続人などに遺言書を保管していることの通知が行くことになっているため、一人の相続人が遺言書の存在を他の相続人に隠しておくことはできません。

また、遺言書に関しては、遺留分の話も無視できません。

遺留分とは、遺言書に相続財産の相続人への配分が指定されていたとしても相続人が最低限取得できる持分のことです。

法改正によって遺留分制度が見直され、これまでできなかった遺留分の金銭請求が可能になりました。「相続開始から10年経過すると時効で遺留分侵害額請求はできなくなる」といったルールはありますが、以前よりも共有名義解消がやりやすくなったなったのです。

事実婚で配偶者居住権は認められるのか

近年、事実婚のケースについても関心が集まっています。

しかしながら、相続法をはじめとした整備は、社会の変化に追いついていないといえます。

例えば、事実婚や内縁関係にある場合、遺されたパートナーに法定相続人として認められていません。法改正のあった配偶者居住権に関しても、事実婚である内縁の妻には認められません。

昨今、結婚しても入籍しない方や同性のカップルもいらっしゃり、社会的に認知され始めています。形にとらわれない意識が世の中に広がっている中で、一部行政では同性のパートナー制度があってパートナーシップ証明書を発行したり、医療の告知を家族以外に認めたりしています。民間でも携帯電話の家族割りを家族以外にも認めるなどの動きが広がっています。一部の金融機関で少しずつ対応が広がっていますが、まだまだ法整備は追いついていないのが日本の現状です。

本記事では「相続法の改正から考える家族の在り方」について解説してきました。

次の章では、今からやっておきたい実家の相続対策について解説します。

この記事の監修者

松原 昌洙マツバラ マサアキ

代表取締役 /
宅地建物取引士

CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。共有持分を始めとした相続トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。

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