所有不動産記録証明制度とは?施行日やメリットをわかりやすく解説|ニュース
所有不動産記録証明制度とは?施行日やメリットをわかりやすく解説
目次
「所有不動産記録証明制度」は、不動産の所有情報をリスト化し、より簡単に不動産の所有状況を把握できるようにするための新制度で、令和8年2月2日施行予定です。
この記事では、所有不動産記録証明制度の施行日や具体的なメリットについて、わかりやすく解説します。
所有不動産記録証明制度の概要
「所有不動産記録証明制度」を使えば、特定の人が所有する不動産を全国規模で一括して調べることができるようになります。
所有不動産記録証明制度とは
所有不動産記録証明制度とは、不動産の登記に記載された名義人の住所や氏名を元に、その名義人が所有している全国の不動産を一括で調べることができる制度です。
この制度を利用すると、名義人が所有する不動産の一覧が「所有不動産記録証明書」という形で提供されます。亡くなった方(被相続人)の不動産だけでなく、現在生存している名義人や法人の名義で登録された不動産も調査が可能です。
所有不動産記録証明制度の目的は、相続登記の漏れを防ぎ、所有者不明の土地をなくすことです。この新制度により、その人が持っている不動産をスムーズに把握できるようになり、先述した目的が達成できることが期待されます。
所有不動産記録証明制度施行の施行日はいつ?
所有不動産記録証明制度施行の施行日は、令和8年(2026年)2月2日となっています。
所有不動産記録証明制度は、まだ仮称であり、2021年(令和3年)4月に「所有者不明土地」の解消に向けた不動産登記法の改正法が成立したタイミングで新設された制度です。(不動産登記法 新第119条2項)
これまでの制度の問題点
これまでも、主に以下の3つの方法により、不動産の所有情報を調べる方法はありました。
- 名寄帳を確認する
- 固定資産税の納税通知書を確認する
- 不動産の権利証を確認する
しかし、それぞれに以下のような問題点がありました。
不動産の調査方法 | 問題点 |
名寄帳 | 名寄帳は、市区町村別に管理されているため、市区町村をまたいで不動産を所有している場合、それぞれ各市区町村で名寄帳の発行手続きを行う必要がある |
固定資産税の納税通知書 | 固定資産税が非課税の不動産は記載されていない |
不動産の権利証 | 権利証を紛失しているケースもある |
このような問題点により、相続対象となる不動産を正確に把握することができない事態が発生し、相続登記が進まず、所有者不明土地が増えてしまう結果となっていました。
所有不動産記録証明制度のメリット
所有不動産記録証明制度の主なメリットとして、以下の3点が挙げられます。
- 相続対象の不動産の抜け漏れを防ぐ
- 遺産分割協議がスムーズに進む
- 遺言書の作成時に活用できる
ここでは、それぞれのメリットについて詳細を解説します。
相続対象の不動産の抜け漏れを防ぐ
まず、所有不動産を調査するタイミングで最も多いのが、相続が発生したタイミングです。
被相続人(亡くなった人)が、どこにどんな不動産を所有していたかを把握し、遺産分割協議を相続人全員で行う必要があります。
名寄帳で所有不動産の確認する場合、名寄帳は市区町村ごとに作成されているため、被相続人が思いもよらぬ場所に不動産を所有していた場合、相続対象の不動産を把握しないまま遺産分割協議が進行してしまう可能性があります。
また、2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。正当な理由なく、相続を知った日から3年以内に相続登記をしていない場合は、10万円の罰金が請求される可能性があります。相続対象の不動産を正確に把握することは、相続登記の漏れを防ぐことにも繋がります。
所有不動産記録証明制度が施行されれば、「相続人が把握していた不動産以外に、実は相続対象の不動産があった!」という事態も防ぐことができるでしょう。
遺産分割協議がスムーズに進む
遺産分割協議に期限はありませんが、相続から3か月を経過すると相続放棄ができなくなることや10か月以内に相続税を支払う必要があることなどを理由に、できるだけスムーズに遺産分割協議を進める必要があります。
所有不動産記録証明制度が施行されれば、これまで市区町村ごとに名寄帳を取り寄せていた手間を省くことができ、スピーディに被相続人の所有不動産を把握することができます。
遺産の洗い出しを早期に行うことで、相続放棄の検討や遺産分割協議に十分な時間を割くことができます。また、「後から相続対象の不動産を出てきて、再度遺産分割協議を行わなければならない」という事態も防ぐことができるでしょう。
遺言書の作成時に活用できる
所有不動産記録証明制度は、相続時以外にも利用することができる制度です。
そのため、生前に遺言書を作成する際にも役立ちます。自身が所有する不動産を資格に把握し、どの不動産を誰に相続させるかなど、相続人同士がトラブルにならないよう、明確な遺言書を作成し後世に引き継ぐことができます。
所有不動産記録証明制度の注意点
所有不動産記録証明制度の注意点は、登記簿に記載されている名義人の住所と氏名が一致していない場合、所有不動産記録証明書の一覧に記載されない可能性がある点です。
不動産の登記に記載されている名義人の名前や住所は、登記した時点の情報のままになっていることが多いです。そのため、もし名義人が結婚などで名前を変えたり、引っ越して住所が変わったりしていても、情報が更新されていなければ正しく検索に反映されないことがあります。このような場合、一部の不動産が検索結果に表示されない可能性がありますので、注意が必要です。
所有不動産記録証明制度を利用する方法
所有不動産記録証明制度は、相続発生時以外にも利用できます。
ここでは、所有不動産記録証明制度を利用できる人や証明書の取得場所について、解説します。
所有不動産記録証明制度を利用できる人
所有不動産記録証明制度を利用できる人は、以下の通りです。
- 不動産の名義人本人
- 不動産の名義人の相続人
- 名義人本人または相続人の代理人(司法書士など)
プライバシーに配慮した結果、証明書を請求できる人は、上記に限られています。
誰の不動産情報でも開示請求できる訳ではなく、基本的には不動産所有者本人または相続人に係る不動産のみが請求できる対象になります。
所有不動産記録証明書はどこで取得できる?
所有不動産記録証明書は、現時点では「法務大臣が指定する登記所」と公表されていますので、恐らく全国の法務局にて取得ができるようになると考えられます。
また、所有不動産記録証明書の取得には、手数料がかかりますが、現時点では具体的な手数料の金額についても公表されていません。
まとめ
所有不動産記録証明制度の施行により、相続対象の不動産を漏れなく把握できるようになります。これにより、社会問題となっている「所有者不明土地」の減少にもつながることが期待されています。
相続トラブルの原因の多くが、不動産によるものとされています。
中央プロパティーでは、相続した不動産に関するトラブル解決実績が多くあります。相続人とのトラブルや活用方法でお悩みの方は、ご相談ください。
※この記事は2024年10月17日時点で公表されている内容に基づき、執筆しています
この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。共有持分を始めとした相続トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。