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共有者に売却を反対されている

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共有者に売却を反対されている

ご相談内容

父の所有していた福岡県古賀市の戸建を母と姉妹3人で相続、5年前に父が亡くなり現在、叔父が住んでいますが、叔父は生活保護を受けており、家賃も支払いません。(固定資産税だけは叔父が支払ってます)

相続発生後、一度も相続登記や遺産分割協議の話をしていません。

売却の相談を家族にしたのですが、叔父が高齢で住替えさせるのは可哀想と反対されています。(もちろん私達家族の持分を買取る資力は叔父にはありません。)

私の共有持分だけ売却することが信義則に反する行為でしょうか?

今後の相続が発生した時に複雑な関係に発展しそうで、トラブルの種を子供たちに残したくありません。

ご相談のポイント

  • 共有持分の売却は自由
  • 単独で申請できる相続登記の内容
  • 相続登記の義務化との関係

①共有持分の売却は自由

共有の不動産を全体で売却するためには、共有者全員の同意が必要になりますが(民法251条1項)、共有持分のみの売却に関しては、他の共有者の同意は不要であり、各共有者が自由に行なうことが可能です(民法206条)。

第三者に共有持分を売却することは、各共有者の持つ権利ですので、信義則違反にはなりません。

むしろ、現にご相談者様が危惧されているように、将来的な相続のことも考えれば、現時点で共有持分を手放すことは、非常に有意義な対策と言えます。

②単独で申請できる相続登記の内容

相続不動産の共有持分を第三者に売却するには、前提として、相続登記を行なう必要があります。

本件では、遺産分割協議は成立していませんが、法定相続分の割合通りの相続登記であれば、相続人のうち1人が単独で申請を行なうことが認められています(不動産登記法63条2項)。

このような相続登記は、全相続共有者のために行なう不動産に対する保存行為(民法252条5項)と考えられています。

本件では、お母様が2分の1、ご相談者様ら3姉妹が各6分の1の割合で共有する内容の相続登記であれば、ご相談者様が単独で申請を行なうことが可能です。

③相続登記の義務化との関係

もっとも、共有関係から生じる権利関係の制約を考えるなら、相続人のうち1名が単独で相続する内容の遺産分割協議を纏めた上で相続登記を行なうことが望ましいのは確かです。

しかし、従来は、遺産分割協議が纏まるまで相続登記が申請されない、遺産分割協議が纏まらなかった場合は相続登記の申請自体が行なわれない等して、被相続人名義のままの不動産が長期間放置されるという事態が多発していました。

この状況を解消するため、今般の法改正で、新たに相続登記の義務化のルールが導入されました。

具体的には、不動産の相続を知った日から3年以内に相続登記を行なわなければならず、正当な理由なく申告期限内に相続登記を行なわなかった場合は、10万円以下の過料を科されるリスクがあります。

但し、本件のように、相続の開始を知った日が改正法の施行日より前の場合は、改正法の施行日(令和6年4月1日)から3年以内=令和9年3月31日が相続登記の期限となります。

いずれにせよ、これまでのような、遺産分割協議が纏まるまで無期限に相続登記を放置するという対応は取れなくなったことにご留意ください。

まとめ

共有持分の売却は各共有者が他の共有者の同意なく自由に行なえる行為であり、信義則違反には当たりません。

法定相続分割合通りの内容の相続登記であれば、遺産分割協議が成立していなくても、各相続人が単独で申請することが可能です。

特に、法改正で相続登記の義務化のルールが導入されたことで、相続登記に法律上の申告期限が設けられ、違反に対して過料が科されるリスクがあることに留意が必要です。

この記事の監修者

都丸 翔五トマル ショウゴ

社内弁護士

当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。

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