他の共有者と売却の足並み揃わない!!|弁護士Q&A
他の共有者と売却の足並み揃わない!!
ご相談内容
父と私(息子)で20年前に一軒家を購入しました。持分の割合は私が3分の1・父が3分の2です。購入後家族で住んでいました。4年前に引っ越すことになりその際は賃貸で貸していたのですが、今年初めに賃借人から契約解除の申し入れがあり家賃収入が無くなってしまいました。
これを機に売却することになったのですが、売却金額の面で全く父が高い金額ばかり言って折り合いがつかなく話しが前に進みません。固定資産税は私が全て払っておりこのままだと私だけが損をしてしまいます。”
ご相談のポイント
- 共有者間での共有持分の売買
- 共有物分割請求訴訟
- 共有持分の第三者への売却
- 固定資産税の清算
①共有者間での共有持分の売買
現状、共有者であるお父様との間で、不動産全体の任意売却の方針について協議が整わないということであるため、他に取り得る方針の選択肢について、順次解説をしたいと思います。
1つ目は、ご相談者様の共有持分をお父様に買い取って頂くという方法が考えられます。
この場合、お父様には、不動産の100%の所有者になれるというメリットがあります。
そのため、お父様がご相談者様の共有持分を購入する場合は、後述するような減価の問題は生じません。
但し、この方法で解決するためには、お父様の側に買い取る意思と代金の支払能力の双方が揃っていることが条件になります。
②共有物分割請求訴訟
2つ目は、お父様との間で協議が纏まらないことを前提に、お父様を相手に共有物分割請求訴訟を提起する方法が考えられます(民法258条1項)。
共有物分割請求訴訟では、現物分割または代償分割(前述の持分買取りの方法)が原則的な分割方法とされていますが、いずれでの解決も困難である場合には、不動産の競売が判決で命じられます(民法258条2項・3項)。
不動産の全体売却の実現が最優先事項という場合には、有効な選択肢と言えます。
但し、共有物分割請求訴訟を選択する際は、裁判に要する時間・費用の負担の問題の他に、法廷の場で原告・被告の立場で正面から争うことになるお父様との個人的な関係が決定的に悪化するリスクについても、事前に織り込んでおく必要があります。
なお、一般的には、任意売却よりも競売の方が不動産の売却価格が低くなる傾向があることにも注意が必要です。
③共有持分の第三者への売却
3つ目は、ご相談者様の共有持分をお父様以外の第三者に売却するという方法です。
共有持分のみの第三者社への売却については、他の共有者の同意は不要です(民法206条)。
共有持分を売却した時点で、共有者の立場から離れますので、ご自身でお父様との間で共有物分割の協議・訴訟を行なう負担から解放されます。
また、他の手段に比べて、解決までにかかる時間が格段に短いことも特徴です。
もっとも、第三者へ売却する場合、共有持分の買主には、お父様という他の共有者が存在するがゆえ、不動産を自由に使用・収益することができないという制約がかかることになります。
このため、第三者に売却する場合の共有持分の評価額は、全体売却をベースにした算定金額から大幅に減額されることになります(このことを共有減価と言います)。
そんな中でも、当社では、独自の入札システムにより、売主にとってより良い条件での購入希望者を探すお手伝いが可能です。
④固定資産税の清算
最後に、ご相談者様が全額支払っている共有不動産の固定資産税の扱いについて解説致します。
法律上、各共有者は、その持分に応じ、共有物の管理費用を負担する義務があります(民法253条1項)。
したがって、ご相談者様がお支払いされた固定資産税の金額のうち3分の2については、お父様に対して費用の清算を請求する権利があります。
仮に、お父様にご相談者様の共有持分を買い取って頂く場合には、その売買代金と相殺する形で解決することが考えられます。
また、ご相談者様の共有持分を第三者に売却する場合は、それと併せて、お父様に対する請求権を共有持分の買主に債権譲渡することも可能です。”
まとめ
共有不動産の全体売却の協議が纏まらない場合の選択肢としては、
- (1)相手共有者に共有持分を買い取って貰う
- (2)共有物分割請求訴訟を提起する
- (3)共有持分を第三者に売却する等
の方法が考えられます。
それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、望ましい解決法を選択されるべきでしょう。
負担した固定資産税については、持分割合に応じて、相手共有者に費用の清算を請求することができます。
また、この請求権を、共有持分の買主に債権譲渡する選択肢もあります。
この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。