遺産分割協議が進まない場合、相続登記はどうする?
遺産分割協議が進まない場合、相続登記はどうする?
ご相談内容
数年前に亡くなった親名義の実家に長男夫婦が住んでいます。
親と同居していた長男夫婦は当然のように住んでいますが、相続人は私を含め複数おります。
長男に相続手続きの話をすると、「親を最後まで面倒見たのは自分たちだ」と繰り返すばかりで相続登記や遺産分割協議書の話がまったく進みません。
どう解決するべきかアドバイスをお願いします。
ご相談のポイント
- 法定相続分に基づく相続登記は単独申請が可能
- 法定相続分に基づく相続登記のデメリット
- 相続登記が義務化された
- 相続登記後の共有持分の売却
①法定相続分に基づく相続登記は単独申請が可能
相続登記には、大きく分けると、(1)遺言に基づく相続登記、(2)遺産分割協議に基づく相続登記、(3)法定相続分に基づく相続登記があります。
今回は、(1)遺言がなく、(2)遺産分割協議も未だ整っていないところ、(3)の法定相続分に基づく相続登記は、他の相続人の同意が無くとも、単独で申請が可能です。
これは、上記の相続登記が、相続共有者全員のために行なう不動産に対する保存行為(民法252条5項)であると考えられているためです。
但し、以下に述べるとおり、法定相続分に基づく相続登記にはデメリットも存在します。
②法定相続分に基づく相続登記のデメリット
最も大きなデメリットは、不動産が共有名義となるため、不動産の利用・管理・処分について、常に共有者との協議・合意が必要となってしまうことです。
また、相続登記を入れた後に内容を変更する場合(相続登記と異なる内容の遺産分割協議が後から成立した場合等)には、追加の登記手続や登記費用・税金等が余計に発生します。
こうした観点からは、特定の相続人が単独で相続する内容の遺産分割協議書を予め作成した上で相続登記をする方が望ましいと言えます。
③相続登記が義務化された
しかし、今般の法改正で、不動産の相続を知ったときから3年以内の相続登記の申請が義務化されました。
期限内に相続登記申請を行なわなかった場合には、10万円以下の過料が科されるリスクがあります。
このため、遺産分割協議が纏まるまで無期限に相続登記を放置するという対応は取れなくなりました。
今後は、申告期限内に遺産分割協議が纏まる見込みがない場合に、過料のリスクを回避する目的で、法定相続分での相続登記が申請されるケースが増えると予想されます。
④相続登記後の共有持分の売却
法定相続分に基づく相続登記をしたものの、その後も他の共有者との話し合いが纏まらない場合は、共有持分を第三者に売却することも選択肢となります。
共有持分を売却すれば、共有関係から離脱することになりますので、不動産をめぐる他の共有者との間の協議の負担から解放されるメリットがあります。
まとめ
法定相続分に基づいた相続登記は、相続共有者全員のための保存行為として、単独での申請が可能です。
共有名義のデメリットを考えると、単独相続の遺産分割協議を纏めた上で相続登記することが望ましいものの、相続登記の義務化の導入もあり、申告期限までに遺産分割協議が纏まらないケースでは、法定相続分に基づく相続登記を行なうことが対策の1つになるでしょう。
相続登記後も共有者間での協議が困難な場合は、自身の共有持分を売却することも選択肢になります。
この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。