遺留分とは|用語集
遺留分とは
目次
遺留分とは
遺留分とは、一定の相続人に対し、故人からの遺言があった場合でも、侵害することのできない一定割合の遺産のことをいいます。
各相続人の遺留分の割合
遺留分の割合は以下の通りです。
例えば遺産総額4,000万円を配偶者と2人の子どもで相続するはずが、遺言書で長男にすべてを相続させるという記述があった場合を考えましょう。
まず法定相続分は、配偶者2分の1、長男次男4分の1となり、遺留分はその法定相続分に2分の1を乗じる形になります。
そうすると遺留分は下記のようになります。
■配偶者:2分の1(法定相続分)×2分の1=4分の1が遺留分、
具体的遺留分は4,000万円×4分の1=1,000万円
■長男 :4分の1(法定相続分)×2分の1=8分の1が遺留分、
具体的遺留分は4,000万円×8分の1=500万円
■次男 :4分の1(法定相続分)×2分の1=8分の1が遺留分、
具体的遺留分は4,000万円×8分の1=500万円
長男に対して配偶者は1,000万円、次男は500万円の遺留分侵害額請求権を行使し、相続するはずだった遺産の一部を取り戻すことができます。
遺留分が認められる人
遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められています(民法1042条1項)
- 配偶者
- 子
- 直系尊属(両親など)
遺留分が認められない人
以下の人は、遺留分が認められません。
- 相続放棄した相続人
- 相続欠格者
- 相続人から排除された者
- 遺留分放棄した者
1. 相続放棄した相続人
遺留分は一定の相続人に認められるものであり、相続放棄をするとそもそも初めから相続人とならなかったものとみなされることから、遺留分についても存在しないことになります。
2. 相続欠格者
相続欠格者とは、一定の事由があったために相続権を失った人のことです。
以下の場合が、相続欠格者の対象です。(民法891条)
- 故意に被相続人又は同順位以上の相続人を死亡、または死亡させようとした者
- 被相続人が殺害されたことを知っていながら告発や告訴をおこなわなかった者
- 詐欺・脅迫によって被相続人の遺言の取り消しや変更を妨げた者
- 詐欺や脅迫によって被相続人の遺言の取り消しや変更を妨害した者
- 被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠蔽した者
3. 相続人から廃除された者
相続人の廃除とは、特定の相続人から相続権を奪うことです。
民法892条では、被相続人に対して虐待や重大な侮辱を加えるなど、著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる旨が示されています。
4. 遺留分放棄した者
遺留分の放棄とは、法律で用意している相続人が最低限もらえる相続財産の権利を放棄することをいいます。遺留分を放棄した場合、遺留分の権利はなくなります。なお、相続開始「前」の遺留分の放棄には家庭裁判所の許可が必要になります。
遺留分の放棄については以下の記事で詳しく解説しています。
遺留分侵害額請求で遺留分を取り戻す方法
遺留分を侵害された場合は、所定の手続きを経て、遺留分を取り戻すことが可能です。
①当人同士で協議する
遺留分を侵害している相手に対し、遺留分の支払いを求める交渉を行います。
②内容証明郵便で遺留分の支払いを請求する
話し合いが難航する場合、内容証明郵便で遺留分侵害額請求書を侵害相手宛てに送ります。
遺留分侵害額請求は、遺留分の侵害を知ってから1年以内と決まっていますが、内容証明郵便による通知をすれば、時効を止めることができます。
③遺留分侵害額の請求調停を申し立てる
当事者同士での解決が望めない場合、家庭裁判所で遺留分調停を申し立てます。
調停委員が申立人と相手方から事情を聴取し、仲介してくれます。当事者同士での話し合いよりも、合理的な解決が見込めます。
④遺留分侵害額請求訴訟を起こす
調停でも解決しない場合は、遺留分侵害額請求訴訟を提起します。
裁判官からの和解案に合意すれば、訴訟が終わります。合意できない場合は、判決に進み、判決に不服がある場合は控訴もできます。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。共有物分割訴訟、遺産分割調停、遺留分侵害額請求など共有持分をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。