共有名義不動産の家賃をめぐるトラブル|弁護士Q&A
共有名義不動産の家賃をめぐるトラブル
ご相談内容
兄弟3人名義の収益アパートを神奈川県川崎市に所有しています。2年前に親から相続しましたが長女がお金に細かく家賃の管理も分配金も姉が勝手に決めて振り込んできます。しかも家賃が姉から振込まれる日は毎月バラバラで金額も毎回違います。
姉は「全部私が管理して大変なの」と言いながら、建物の手直しに〇〇万円かかったと事後報告で連絡が来たりします。姉は独り身で本件アパートの一室に住んでいるという事情から「私が管理しているんだから」の主張は分かりますが姉は家賃負担なしでアパートに住んでいます。
私は現金化したいのですが他の共有者は売却の意思はありません。
円満に共有者らで所有を続ける良い方法をアドバイス下さい。
ご相談のポイント
- 共有不動産の賃料収益の分配
- 共有不動産にかかる負担の分配
- 占有共有者と非占有共有者の法律関係
①共有不動産の賃料収益の分配
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます(民法249条1項)。
したがって、共有者間で別段の合意が無い限り、共有不動産から得た賃料収益に関しては、各共有者が、その持分割合に応じて分配を受ける権利があります。
ある特定の共有者が賃料収益を独占している、あるいは、本件のように賃料収益の分配を十分に受けられていないという場合には、当該共有者に対して、不当利得返還請求権に基づき、持分割合に応じた賃料収益の分配を求めることが可能です。
②共有不動産にかかる負担の分配
他方で、各共有者は、その持分に応じ、共有物の管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う必要があります(民法253条1項)。
ここにいう管理費用には、不動産の固定資産税の他、修繕費等も含まれます。
そのため、お姉様の立場からすると、「毎月の振込金額に差が生じているのは、その月の賃料収益の分配額から、その月に発生した管理費用の分担額を差し引いているためであり、賃料は適正に分配している。」という言い分があるかもしれません。
もしそうであれば、お姉様に、賃料収益の入金履歴や、修繕費の領収証など、分配額の計算のエビデンスを開示して頂くよう求めるべきです。
③占有共有者と非占有共有者の法律関係
前述のとおり、各共有者は、共有物の全部について、持分割合に応じた使用権があります。
このため、特定の共有者が共有不動産を単独で占有している場合でも、他の共有者は、当然には不動産の明渡を請求することができません。
このことは、占有している共有者の側が少数持分権者であったとしても同様です。
他方で、権原なく共有不動産を単独占有している共有者に対して、他の共有者は、持分割合に応じて、賃料相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払いを請求をすることができます。
本件に当てはめると、仮に、3兄弟が各3分の1の持分割合のところ、お姉様が住んでいる部屋が、本来なら月額12万円で人に貸し出せる物件であるならば、ご相談者様からお姉様に対して、ひと月あたり4万円の賃料相当額の支払いを請求することが可能です。
その際は、賃料相当額の計算のエビデンスを、予め準備しておくべきです。
本件の場合は、同じアパートの別室の賃料が有効な判断材料となるでしょう。
まとめ
共有不動産の賃料収益について、各共有者は、持分に応じた分配を受ける権利があり、過大に賃料収益を受領している共有者に対しては、不当利得返還請求権に基づき、賃料収益の分配を請求することが可能です。
他方で、共有不動産の管理費用について、各共有者は、持分に応じて負担する義務があります。
特定の共有者が賃料収益を全て受領し、かつ管理費用を全て支出しているケースでは、収支のエビデンスは開示して貰いつつ、持分割合に応じた収支の精算を行なった上で残金を分配して貰う方法が簡便です。
特定の共有者が共有不動産を単独で占有している場合、他の共有者は、原則として明渡の請求はできませんが、持分割合に応じた賃料相当額の支払いを請求することが可能です。
この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。